『オラの家族 Vol.10 チコ』
チコについて,Vol.6でも書いたが,トコのことの方が量的にも内容的にも多かったので,改めて書こうと思う。
チコはインコである。
セキセイインコである。
因みに『セキセイ』とは『背黄青』と書く。
つまりは,背中の羽の色が黄色や青なのである。
チコとトコを飼い始めたのは確か小学校の高学年からだったと思う。
なぜか,雛のチコとトコを世話した記憶はあるのだが,時期や季節の記憶が無い。
トコは天寿を全うすることはできなかったが,チコは長生きをした。
オイラが大学に通うようになっても,生きていた。
チコは,人懐っこいインコであった。
籠から出すと,よく,人の肩や頭に止っていた。
また,話もできた。
勿論,会話はできない。
いわゆる鸚鵡返しである。
彼が覚えていたフレーズは以下の通りである。
「あっちゃん,学校」
「お父さん,お仕事」
「お兄ちゃん,勉強」
「チコちゃん,チコちゃん」
の,4種類である。
しかし,彼はこの4つのフレーズを組み合わせて,彼なりに豊富に富む話をしていた。
「お父さん,勉強」
とか
「あっちゃん,お仕事」
という具合である。
それなら,まだいいが,調子に乗ると
「チコちゃん,お仕事」
などと言っていた。
嘘をつけ。
お前は,何にも仕事していないだろうが。
という,突っ込みを何回も入れたが,彼は反省しなかった。
どの鳥もそうなのかは確認していないが,彼は爪の音が好きだった。
親指と中指の爪を弾くと「パチッ」というか「カチッ」というか,音が出る。
彼は,その音が大好きで,その音を聞くと興奮して毛が逆立ち,瞳孔をキュッとすぼめた。
そして,話を始めた。
特に眠たいときは,顕著であった。
オイラは,暇になると爪の音を立てて,チコに話をさせていた。
オイラも楽しんだが,彼も彼なりに楽しんでいたと思う。
チコは,人間で言えば中年の辺りで連れ添いを失った。
きっと,熟年,老年の頃は寂しかったろうと思う。
しかし,その分,彼は人間に甘えてきた。
果物が好きで,よくオイラの肩に止って,林檎をシャリシャリいわせて,食べていた。
しかし,齧った林檎を飲み込むより,辺りにばら撒いている方が多かったと思う。
彼は,食欲を満たすというよりは,その齧る音が好きだったのだろうと思う。
彼は,オイラが大学生の頃に大往生した。
10年位生きたのだから,長寿の部類に入ると思う。
ある朝,彼は籠の中で冷たくなっていた。
オイラは,そっと土に埋めた。
その後,オイラは鳥を飼っていない。
きっと,チコは今でも虹の橋の袂で,林檎をシャリシャリいわせていると思う。
月曜日, 11月 27, 2006
土曜日, 11月 25, 2006
ヒロシの足とオイラの足
ヒロシの足とオイラの足
オイラはクレヨンしんちゃんが好きである。
TVでは,ふざけたことばかりやっているが,映画になると,ほろりとさせられる場面があり,そのギャップがまたいい。
TVのふざけ方も好きだし,映画のシリアスさも好きである。
ということで,足の話である。
しんちゃんの父ちゃんであるヒロシは,足が臭い設定になっている。
その設定によると,かなり臭いらしい。
どれくらい臭いのか,想像で計測してみた。
元になる映画は,『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ! オトナ帝国の逆襲』である。
この話のあらすじを書いてみよう。
昭和40年頃の懐かしきよき時代を忘れられぬ人物が,ある種の懐かしい匂いを発する機械を作った。
その匂いによって,大人達は子供を捨て,昭和の世界に行ってしまった。
しかし,その陰謀をしんちゃん達が潰すというストーリーである。
長々の説明,下手糞で済まない。
で,登場するのが『ヒロシの足の臭(にお)い』である。
主人公であるしんちゃんとその一家は,ヒロシの足の臭いのおかげで,その陰謀を潰すことができたのである。
ヒロシの足の臭さで,懐かしい匂いを断ち切るができたのである。
その匂いは,全国に広まっているのである。
そんな匂いに打ち勝つことのできる臭さ。
それは,どんな臭さだろう。
まず,考えられるのは,『くさやの干物』である。
次に考えられるのは,『納豆』である。
いや,納豆では弱いか。
すると考えられるのは・・・
あの北欧にある醗酵した缶詰だ。
その缶詰は,室内で開けないよう注意書きされているそうだ。
室内で開けると,その臭いで失神する人もいるからだそうだ。
これだ。
ヒロシの足は,これだ。
オイラの足の臭さも相当である。
足の臭さで,負ける自信は無い。
誰であれ,まず,勝つと思う。
ホームレスの方々にも勝つ自信がある。
オイラの足の臭さの成分の大半は,酢酸の臭いである。と思う。
すっぱい臭さである。
そのすっぱ臭い,臭(にお)いの中にスルメの臭いも混じってる。
オイラは,時々,その臭いを嗅いでうっとりとする。
オイラは酢酸の臭いが駄目である。
酢飯が嫌いである。
酢の物も,家ではレモンの絞り汁で作らせている。
マヨネーズの臭いも駄目である。
朝,起きると時々,マヨネーズの臭いがする時がある。
娘の朝食のせいである。
そんな日は,1日中機嫌が悪い。
話を元に戻そう。
オイラは,酢酸の臭いは駄目だが,すっぱ臭い自分の足の臭いは大好きである。
猫のマタタビのようなものである。
風呂に数日入らなかったら,最高である。
こうして,PCの前でも,足の指の間を手の指で擦り,臭いを楽しんでいる。
今もそうである。
鼻くそや耳くその臭いもいいが,やはり足の臭いには負ける。
ぽこてぃんのマラカスの臭いも捨てがたいが,足の臭いには敵わない。
足臭,万歳である。
何せ,無料で楽しめるのだから。
あなたも自分の足の臭いを嗅いでみて下さい。
きっと,中毒になるはずだから。
オイラはクレヨンしんちゃんが好きである。
TVでは,ふざけたことばかりやっているが,映画になると,ほろりとさせられる場面があり,そのギャップがまたいい。
TVのふざけ方も好きだし,映画のシリアスさも好きである。
ということで,足の話である。
しんちゃんの父ちゃんであるヒロシは,足が臭い設定になっている。
その設定によると,かなり臭いらしい。
どれくらい臭いのか,想像で計測してみた。
元になる映画は,『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ! オトナ帝国の逆襲』である。
この話のあらすじを書いてみよう。
昭和40年頃の懐かしきよき時代を忘れられぬ人物が,ある種の懐かしい匂いを発する機械を作った。
その匂いによって,大人達は子供を捨て,昭和の世界に行ってしまった。
しかし,その陰謀をしんちゃん達が潰すというストーリーである。
長々の説明,下手糞で済まない。
で,登場するのが『ヒロシの足の臭(にお)い』である。
主人公であるしんちゃんとその一家は,ヒロシの足の臭いのおかげで,その陰謀を潰すことができたのである。
ヒロシの足の臭さで,懐かしい匂いを断ち切るができたのである。
その匂いは,全国に広まっているのである。
そんな匂いに打ち勝つことのできる臭さ。
それは,どんな臭さだろう。
まず,考えられるのは,『くさやの干物』である。
次に考えられるのは,『納豆』である。
いや,納豆では弱いか。
すると考えられるのは・・・
あの北欧にある醗酵した缶詰だ。
その缶詰は,室内で開けないよう注意書きされているそうだ。
室内で開けると,その臭いで失神する人もいるからだそうだ。
これだ。
ヒロシの足は,これだ。
オイラの足の臭さも相当である。
足の臭さで,負ける自信は無い。
誰であれ,まず,勝つと思う。
ホームレスの方々にも勝つ自信がある。
オイラの足の臭さの成分の大半は,酢酸の臭いである。と思う。
すっぱい臭さである。
そのすっぱ臭い,臭(にお)いの中にスルメの臭いも混じってる。
オイラは,時々,その臭いを嗅いでうっとりとする。
オイラは酢酸の臭いが駄目である。
酢飯が嫌いである。
酢の物も,家ではレモンの絞り汁で作らせている。
マヨネーズの臭いも駄目である。
朝,起きると時々,マヨネーズの臭いがする時がある。
娘の朝食のせいである。
そんな日は,1日中機嫌が悪い。
話を元に戻そう。
オイラは,酢酸の臭いは駄目だが,すっぱ臭い自分の足の臭いは大好きである。
猫のマタタビのようなものである。
風呂に数日入らなかったら,最高である。
こうして,PCの前でも,足の指の間を手の指で擦り,臭いを楽しんでいる。
今もそうである。
鼻くそや耳くその臭いもいいが,やはり足の臭いには負ける。
ぽこてぃんのマラカスの臭いも捨てがたいが,足の臭いには敵わない。
足臭,万歳である。
何せ,無料で楽しめるのだから。
あなたも自分の足の臭いを嗅いでみて下さい。
きっと,中毒になるはずだから。
水曜日, 11月 22, 2006
オラの家族 9
『オラの家族 Vol.9 ポピー』
オイラが小学校の1年生か2年生の頃だったと思う。
その頃も,犬を飼っていた。
名前はポピーである。
どのような経緯でその犬を飼うようになったのかは覚えていない。
真っ白で,スピッツのようなふわふわの毛をした犬だった。
可愛がってはいたのだけれども,あまり,ポピーとの思い出は無い。
唯一つ,強く記憶に残っていることがある。
ある日,ポピーは小屋の中で蹲っていた。オイラ達がいくら呼んでも決して出て来ようとはしなかった。
オイラ達は小屋に近づいた。
すると,普段はおとなしいポピーが,唸り声を上げた。
オイラ達は吃驚して,すぐに小屋から離れた。
遠くから小屋の中を覗くオイラ達。
ようやく少し見えた。
小屋の中には,鼠のような生き物がいる。
それも数匹。
最初,オイラ達はポピーが鼠に襲われているのかと思った。
ポピーを早く助けなきゃ。
そう思い,もう一度小屋にオイラは近づいた。
またしても,ポピーは唸る。
その時,オイラの目にはっきりと見えた。
中にいるのは鼠じゃない。
犬の赤ちゃんだ。
この時になって初めてオイラ達は,ポピーが雌犬だったことを知った。
なんとも情けない飼い主である。
ポピーの子供達はどうなったか覚えていない。
きっと,親父が処分したんだろうと思う。
しかし,あの時のポピーの我が子を守ろうとする母の強さを感服せずにはいられない。
ポピーが天国で自分の子供達と一緒に幸せに暮らしていることを願う。
オイラが小学校の1年生か2年生の頃だったと思う。
その頃も,犬を飼っていた。
名前はポピーである。
どのような経緯でその犬を飼うようになったのかは覚えていない。
真っ白で,スピッツのようなふわふわの毛をした犬だった。
可愛がってはいたのだけれども,あまり,ポピーとの思い出は無い。
唯一つ,強く記憶に残っていることがある。
ある日,ポピーは小屋の中で蹲っていた。オイラ達がいくら呼んでも決して出て来ようとはしなかった。
オイラ達は小屋に近づいた。
すると,普段はおとなしいポピーが,唸り声を上げた。
オイラ達は吃驚して,すぐに小屋から離れた。
遠くから小屋の中を覗くオイラ達。
ようやく少し見えた。
小屋の中には,鼠のような生き物がいる。
それも数匹。
最初,オイラ達はポピーが鼠に襲われているのかと思った。
ポピーを早く助けなきゃ。
そう思い,もう一度小屋にオイラは近づいた。
またしても,ポピーは唸る。
その時,オイラの目にはっきりと見えた。
中にいるのは鼠じゃない。
犬の赤ちゃんだ。
この時になって初めてオイラ達は,ポピーが雌犬だったことを知った。
なんとも情けない飼い主である。
ポピーの子供達はどうなったか覚えていない。
きっと,親父が処分したんだろうと思う。
しかし,あの時のポピーの我が子を守ろうとする母の強さを感服せずにはいられない。
ポピーが天国で自分の子供達と一緒に幸せに暮らしていることを願う。
火曜日, 11月 21, 2006
連絡
連絡です。
この度,VIP ROOMができました。
感想,批評,批判,ご意見,悪口等々,書いて下さると嬉しいです。
涎が出ます。
尿も漏れます。
ブログの右側からのリンクで入れます。
談話室でも,自由人の亜空間でもいいです。
でも,VIP ROOMが一番使い勝手がいいようです。
画像もアップできます。
お待ちしてます。
スー
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スー
月曜日, 11月 20, 2006
その仔 3
『その仔 3』
その仔は,その日も玄関にいた。
静かな雨音だけが聞こえる昼下がりだった。
その仔は,静かな眠りと静かな雨音のはざまにいた。
唐突にドアが開いた。
その仔は,今まで足音を聞き逃したことが無い。
その仔は,何が起こったのか,すぐには飲み込めずにいた。
しかし,ドアのところには,懐かしい彼女の顔があった。
その仔は,立ち上がった。
かに見えたが,そうではなかった。
その仔はもう立ち上がれなかった。
その仔は,立ち上げれないもどかしさで一声吠えた。
すぐに彼女が抱きしめてくれた。
その仔は嬉しさあまりに力いっぱいに尻尾を振った。
しかし,それはあまりにも弱々しい振り方だった。
その仔は彼女の顔を舐めた。
塩辛い味がした。
彼女は顔をくしゃくしゃにしながら,その仔をただ抱きしめていた。
そして,彼女は,そっとその仔を寝かせた。
その仔は,されるがままだった。
彼女は,そっとその仔の頭をなでた。
その仔は,小さく尻尾を振った。
かすんでよく見えない目で,その仔は彼女の顔を見つめた。
彼女が泣いている。
なぜ泣いているのか,その仔はよく分からなかった。
その仔はなんだか疲れていた。
彼女と草原をもう一度走りたかった。
その仔は,尻尾を振りながら目を閉じた。
その仔が目を開けることはもうなかった。
その仔は,今,花の咲き乱れる草原で,元気に走り回っている。
彼女が早くここに来ることを願いながら。
その仔は,その日も玄関にいた。
静かな雨音だけが聞こえる昼下がりだった。
その仔は,静かな眠りと静かな雨音のはざまにいた。
唐突にドアが開いた。
その仔は,今まで足音を聞き逃したことが無い。
その仔は,何が起こったのか,すぐには飲み込めずにいた。
しかし,ドアのところには,懐かしい彼女の顔があった。
その仔は,立ち上がった。
かに見えたが,そうではなかった。
その仔はもう立ち上がれなかった。
その仔は,立ち上げれないもどかしさで一声吠えた。
すぐに彼女が抱きしめてくれた。
その仔は嬉しさあまりに力いっぱいに尻尾を振った。
しかし,それはあまりにも弱々しい振り方だった。
その仔は彼女の顔を舐めた。
塩辛い味がした。
彼女は顔をくしゃくしゃにしながら,その仔をただ抱きしめていた。
そして,彼女は,そっとその仔を寝かせた。
その仔は,されるがままだった。
彼女は,そっとその仔の頭をなでた。
その仔は,小さく尻尾を振った。
かすんでよく見えない目で,その仔は彼女の顔を見つめた。
彼女が泣いている。
なぜ泣いているのか,その仔はよく分からなかった。
その仔はなんだか疲れていた。
彼女と草原をもう一度走りたかった。
その仔は,尻尾を振りながら目を閉じた。
その仔が目を開けることはもうなかった。
その仔は,今,花の咲き乱れる草原で,元気に走り回っている。
彼女が早くここに来ることを願いながら。
その仔 2
『その仔 2』
その仔は,いつも玄関で彼女を待っていた。
彼女の足音が聞こえると,大きく尻尾を振った。
彼女はいつもすぐに抱きしめてくれた。
その仔は彼女の匂いを嗅ぎながら,尻尾を振り続けた。
いつまでも。
ある日,彼女は行ってしまった。
その日の彼女は白い服を着ていた。
その日,彼女は別れる時,涙を浮かべていた。
いつもより強く抱きしめられた。
その仔は,いつものように玄関で,彼女を待っていた。
しかし,その日,彼女は帰って来なかった。
長い間,その仔は彼女を待っていた。
朝まで,待っていた。
でも,彼女が帰って来ることはなかった。
次の日もまた次の日もその仔は,彼女を待ち続けた。
彼女の足音が聞こえてくるのを待っていた。
その仔のそばに,食物が置かれるようになった。
その仔は玄関以外にいることはなかった。
時々,大儀そうにその仔は食事した。
時々,水も飲んだ。
昼寝もした。
しかし,足音が近づくたびに,耳をそばだてた。
でも,彼女が帰って来ることは無かった。
来る日も来る日も懐かしい足音を待っていた。
そして,ついに懐かしい足音を聞く時が来た。
彼女がドアを開けた。
懐かしい顔がそこにはあった。
その仔は懐かしさのあまり,千切れんばかりに尻尾を振った。
彼女はその仔を抱きしめた。
彼女の匂いがした。
同時に,忘れかけていた母親の乳房の匂いも感じていた。
彼女の後ろに見知らぬ人が立っていた。
その人は,小さな包みを抱えていた。
彼女とその人は,大事そうに包みを抱いていた。
夜になり,その仔は彼女のそばで寝ようとした。
しかし,彼女はそうさせてはくれなかった。
仕方なくその仔は,居間で寝た。
寝ている途中,彼女が何度も起きてきた。
そのたびに,今まで聞いたこともない泣き声が聞こえてきた。
彼女はとても,そう,とても忙しそうだった。
次の日,その仔は,草原で走れると思った。
以前のように彼女が連れて行ってくれると信じていた。
しかし,彼女は草原には連れて行ってくれなかった。
それどころか,彼女は小さな包みを抱いてばかりいて,かまってくれなかった。
その仔はただ,彼女の足を舐めていた。
一日中。
彼女が以前のように遊んでくれないのが,その仔は不思議だった。
不満だった。
寂しかった。
かまって欲しかった。
その日,彼女は唐突にいなくなった。
出かける時の抱擁も無かった。
その仔はまた,玄関でいつまでも彼女を待つ。
いつか彼女が帰ってくるのを期待しながら。
その仔は,いつも玄関で彼女を待っていた。
彼女の足音が聞こえると,大きく尻尾を振った。
彼女はいつもすぐに抱きしめてくれた。
その仔は彼女の匂いを嗅ぎながら,尻尾を振り続けた。
いつまでも。
ある日,彼女は行ってしまった。
その日の彼女は白い服を着ていた。
その日,彼女は別れる時,涙を浮かべていた。
いつもより強く抱きしめられた。
その仔は,いつものように玄関で,彼女を待っていた。
しかし,その日,彼女は帰って来なかった。
長い間,その仔は彼女を待っていた。
朝まで,待っていた。
でも,彼女が帰って来ることはなかった。
次の日もまた次の日もその仔は,彼女を待ち続けた。
彼女の足音が聞こえてくるのを待っていた。
その仔のそばに,食物が置かれるようになった。
その仔は玄関以外にいることはなかった。
時々,大儀そうにその仔は食事した。
時々,水も飲んだ。
昼寝もした。
しかし,足音が近づくたびに,耳をそばだてた。
でも,彼女が帰って来ることは無かった。
来る日も来る日も懐かしい足音を待っていた。
そして,ついに懐かしい足音を聞く時が来た。
彼女がドアを開けた。
懐かしい顔がそこにはあった。
その仔は懐かしさのあまり,千切れんばかりに尻尾を振った。
彼女はその仔を抱きしめた。
彼女の匂いがした。
同時に,忘れかけていた母親の乳房の匂いも感じていた。
彼女の後ろに見知らぬ人が立っていた。
その人は,小さな包みを抱えていた。
彼女とその人は,大事そうに包みを抱いていた。
夜になり,その仔は彼女のそばで寝ようとした。
しかし,彼女はそうさせてはくれなかった。
仕方なくその仔は,居間で寝た。
寝ている途中,彼女が何度も起きてきた。
そのたびに,今まで聞いたこともない泣き声が聞こえてきた。
彼女はとても,そう,とても忙しそうだった。
次の日,その仔は,草原で走れると思った。
以前のように彼女が連れて行ってくれると信じていた。
しかし,彼女は草原には連れて行ってくれなかった。
それどころか,彼女は小さな包みを抱いてばかりいて,かまってくれなかった。
その仔はただ,彼女の足を舐めていた。
一日中。
彼女が以前のように遊んでくれないのが,その仔は不思議だった。
不満だった。
寂しかった。
かまって欲しかった。
その日,彼女は唐突にいなくなった。
出かける時の抱擁も無かった。
その仔はまた,玄関でいつまでも彼女を待つ。
いつか彼女が帰ってくるのを期待しながら。
その仔 1
『その仔』
その仔は,見捨てられた仔だった。
誰からも顧みられることのない仔だった。
5月のある日,彼女はその仔と出会った。
彼女は4匹の中からその仔を選んだ。
躊躇することなく。
帰りの車の中,ダンボールの小さな箱の中で,その仔は小さく震えていた。
車が止った時も,その仔は不安だった。
その仔は,家の中に入れられた。
そこは,最初,その仔にとって冷たく感じられた。
どこを探しても,暖かい母親のお腹は無かった。
無性に獣臭い小屋の匂いが懐かしかった。
その仔の目の前に,食物が置かれた。
その仔は少し匂いを嗅ぎ,彼女を見上げた。
彼女は,優しくその仔の頭を撫でた。
その仔は,それまでそんなことをされたことがなかった。
いつも,その仔は隅に追いやられていた。
いつも,その仔は他の仔にはじかれていた。
いつも,母親の乳房の出の少ないところにあてがわれた。
その仔の後ろ足は丈夫でなかった。
その仔にとって頭は,殴られるためにある物だった。
その仔は,他にとって疎まれる存在だった。
その仔は戸惑った。
なぜ?
わたしがたべていいの?
わたしのあたまをなでるのはどうして?
その仔は,何もかもが不思議だった。
その仔は,不意に抱きかかえられた。
その仔はちょっと不安になった。
いつ落とされるのかと,恐怖心でいっぱいだった。
でも,彼女はその仔を抱きかかえ,頬ずりをした。
その仔は,くすぐったさを感じながらも悪い気持ちではなかった。
その仔は,初めて人の優しさを知った。
その仔は大きくなった。
彼女はもう,その仔を抱きかかえることができない。
その仔はもう,仔ではなかった。
でも,彼女の前でのその仔は,仔だった。
彼女が草原を走る。
その仔は彼女を追いかける。
その仔は足が悪いため,なかなか彼女に追いつけない。
彼女が走るのをやめる。
その仔は彼女に追いつく。
その仔は彼女に抱きしめられる。
その仔は彼女の匂いを嗅ぎながら,暖かい日差しを浴びる。
その仔は,もう,獣臭い小屋のことを忘れてしまった。
自分を小突いてばかりいる兄弟を忘れた。
母親の硬くしぼんだ乳房を忘れた。
今,あるのは,彼女の存在。
いつも優しく抱きしめてくれる彼女。
この頭を撫でてくれる優しい手。
時々,草原で繰り広げられる追いかけっこ。
その仔は,生まれて初めて幸せを感じた。
その仔は,見捨てられた仔だった。
誰からも顧みられることのない仔だった。
5月のある日,彼女はその仔と出会った。
彼女は4匹の中からその仔を選んだ。
躊躇することなく。
帰りの車の中,ダンボールの小さな箱の中で,その仔は小さく震えていた。
車が止った時も,その仔は不安だった。
その仔は,家の中に入れられた。
そこは,最初,その仔にとって冷たく感じられた。
どこを探しても,暖かい母親のお腹は無かった。
無性に獣臭い小屋の匂いが懐かしかった。
その仔の目の前に,食物が置かれた。
その仔は少し匂いを嗅ぎ,彼女を見上げた。
彼女は,優しくその仔の頭を撫でた。
その仔は,それまでそんなことをされたことがなかった。
いつも,その仔は隅に追いやられていた。
いつも,その仔は他の仔にはじかれていた。
いつも,母親の乳房の出の少ないところにあてがわれた。
その仔の後ろ足は丈夫でなかった。
その仔にとって頭は,殴られるためにある物だった。
その仔は,他にとって疎まれる存在だった。
その仔は戸惑った。
なぜ?
わたしがたべていいの?
わたしのあたまをなでるのはどうして?
その仔は,何もかもが不思議だった。
その仔は,不意に抱きかかえられた。
その仔はちょっと不安になった。
いつ落とされるのかと,恐怖心でいっぱいだった。
でも,彼女はその仔を抱きかかえ,頬ずりをした。
その仔は,くすぐったさを感じながらも悪い気持ちではなかった。
その仔は,初めて人の優しさを知った。
その仔は大きくなった。
彼女はもう,その仔を抱きかかえることができない。
その仔はもう,仔ではなかった。
でも,彼女の前でのその仔は,仔だった。
彼女が草原を走る。
その仔は彼女を追いかける。
その仔は足が悪いため,なかなか彼女に追いつけない。
彼女が走るのをやめる。
その仔は彼女に追いつく。
その仔は彼女に抱きしめられる。
その仔は彼女の匂いを嗅ぎながら,暖かい日差しを浴びる。
その仔は,もう,獣臭い小屋のことを忘れてしまった。
自分を小突いてばかりいる兄弟を忘れた。
母親の硬くしぼんだ乳房を忘れた。
今,あるのは,彼女の存在。
いつも優しく抱きしめてくれる彼女。
この頭を撫でてくれる優しい手。
時々,草原で繰り広げられる追いかけっこ。
その仔は,生まれて初めて幸せを感じた。
日曜日, 11月 19, 2006
オラの家族 8
『オラの家族 Vol.8 チロ』
オイラが保育所に通っていた頃,チロという犬を飼っていた。
とても小さな犬だった。
抱かれても抱かれるに任せるおとなしい犬だった。
近所に人たちにも可愛がられていた。
チロの思い出は,2つある。
1つは懐かしく,1つは悲しい。
1つ目は,冬のことである。
オイラは兄と近所の子と3人で遊んでいた。
雪合戦やら橇滑りで遊んでいた。
チロは,オイラ達と一緒に跳ね回っていた。
そして,写真を撮ってもらった。
とても幸福な一時だった。
この時のチロが一番幸せだったと思う。
2つ目は,稲刈りの季節だったと思う。
母が,知り合いの家に稲刈りの手伝いに行っていた。
そして,オイラとチロも一緒に行った。
その日のチロは様子がおかしかった。
やたらと物を齧っていた。
他の人の家なのに,たんすやら椅子やら何でも手当たり次第に齧っていた。
そして,そのうち,人も齧るようになった。
しかし,オイラと母の手は,流石に齧れなかったのだろう。
押し付けるように舐めていた。
齧りたくて齧りたくて堪らないのを我慢していたのだろう。
そのうち,辺りを走り出した。
それも尋常な走り方ではなかった。
狂ったように走っていた。
オイラ達はチロをおとなしくさせようとした。
しかし,いくらオイラ達が呼んでも,近づかなかった。
唸り声を発しながら走り回っていた。
やがて,チロは山の中へと走り去って行った。
今にして思えば,あの時のチロは狂犬病に罹っていたのではないかと思う。
きっとチロは,狂犬病をうつさないように人のいないところへといったのだろう
それから,二度とチロの姿を見ることは無かった。
あの山のどこかで安らかに眠っていることを願っている。
そして,虹の橋を一緒に渡りたい。
オイラが保育所に通っていた頃,チロという犬を飼っていた。
とても小さな犬だった。
抱かれても抱かれるに任せるおとなしい犬だった。
近所に人たちにも可愛がられていた。
チロの思い出は,2つある。
1つは懐かしく,1つは悲しい。
1つ目は,冬のことである。
オイラは兄と近所の子と3人で遊んでいた。
雪合戦やら橇滑りで遊んでいた。
チロは,オイラ達と一緒に跳ね回っていた。
そして,写真を撮ってもらった。
とても幸福な一時だった。
この時のチロが一番幸せだったと思う。
2つ目は,稲刈りの季節だったと思う。
母が,知り合いの家に稲刈りの手伝いに行っていた。
そして,オイラとチロも一緒に行った。
その日のチロは様子がおかしかった。
やたらと物を齧っていた。
他の人の家なのに,たんすやら椅子やら何でも手当たり次第に齧っていた。
そして,そのうち,人も齧るようになった。
しかし,オイラと母の手は,流石に齧れなかったのだろう。
押し付けるように舐めていた。
齧りたくて齧りたくて堪らないのを我慢していたのだろう。
そのうち,辺りを走り出した。
それも尋常な走り方ではなかった。
狂ったように走っていた。
オイラ達はチロをおとなしくさせようとした。
しかし,いくらオイラ達が呼んでも,近づかなかった。
唸り声を発しながら走り回っていた。
やがて,チロは山の中へと走り去って行った。
今にして思えば,あの時のチロは狂犬病に罹っていたのではないかと思う。
きっとチロは,狂犬病をうつさないように人のいないところへといったのだろう
それから,二度とチロの姿を見ることは無かった。
あの山のどこかで安らかに眠っていることを願っている。
そして,虹の橋を一緒に渡りたい。
土曜日, 11月 18, 2006
オラの家族 7
『オラの家族 Vol.7 ココ』
ココは,不憫な仔だった。
ココは,チコとトコの仔である。
ココは,双子の片割れだった。
ココはアルビノであった。
柔らかい羽毛は真っ白だった。
やはり,自然は弱いものに厳しい。
ココは,親から見捨てられた仔だった。
親に餌を満足に与えてもらえなかった。
いつも弱々しくピーピー鳴いていた。
籠の隅で。
オイラは,ココを親から離した。
このままだとココが死んでしまう。
そんな思いからだった。
しかし,それはオイラの過ちだったのかもしれない。
オイラはココを籠から出し,菓子の空き箱で育てることにした。
食事が満足に与えられ,少しずつ体が大きくなっていった。
しかし,いつまで経っても羽毛は真っ白のままだった。
オイラは,毎日ココを手の中で抱いて,撫でていた。
ココは嬉しそうに目を細めていた。
手の中のココは,ふわふわで温かかった。
ある時,ココは飛んだ。
大きくなったココは,飛べるようになっていたのだ。
そして,その朝,ココは飛んでしまった。
台所にあった,ぐらぐらと煮え立つお湯の中へと。
慌てて,お袋はお湯からココを救い出した。
しかし,ココは無事ではなかった。
ココは下半身を大きく火傷してしまった。
ずっと蹲ったままだった。
排泄が苦しそうだった。
満足に排泄物が出せなかった。
オイラは,暇があるとお尻を濡らしたちり紙で,拭いてあげた。
オロナインも塗ってみた。
毎日毎日ココを抱いていた。
ココは小さく震えていた。
そして,苦しみの中,ココは死んでしまった。
火傷の苦しみの中で。
ココは親に苦しめられ,火傷に苦しめられ。
ココは苦しむために生まれてきたのだろうか。
オイラがもっと気を付けていれば,飛べそうに育ったのだから籠に入れれば,ココは楽しい一生を終えられたかもしれない。
オイラには,後悔とココの柔らかい羽毛の感触だけが残っている。
ココは,不憫な仔だった。
ココは,チコとトコの仔である。
ココは,双子の片割れだった。
ココはアルビノであった。
柔らかい羽毛は真っ白だった。
やはり,自然は弱いものに厳しい。
ココは,親から見捨てられた仔だった。
親に餌を満足に与えてもらえなかった。
いつも弱々しくピーピー鳴いていた。
籠の隅で。
オイラは,ココを親から離した。
このままだとココが死んでしまう。
そんな思いからだった。
しかし,それはオイラの過ちだったのかもしれない。
オイラはココを籠から出し,菓子の空き箱で育てることにした。
食事が満足に与えられ,少しずつ体が大きくなっていった。
しかし,いつまで経っても羽毛は真っ白のままだった。
オイラは,毎日ココを手の中で抱いて,撫でていた。
ココは嬉しそうに目を細めていた。
手の中のココは,ふわふわで温かかった。
ある時,ココは飛んだ。
大きくなったココは,飛べるようになっていたのだ。
そして,その朝,ココは飛んでしまった。
台所にあった,ぐらぐらと煮え立つお湯の中へと。
慌てて,お袋はお湯からココを救い出した。
しかし,ココは無事ではなかった。
ココは下半身を大きく火傷してしまった。
ずっと蹲ったままだった。
排泄が苦しそうだった。
満足に排泄物が出せなかった。
オイラは,暇があるとお尻を濡らしたちり紙で,拭いてあげた。
オロナインも塗ってみた。
毎日毎日ココを抱いていた。
ココは小さく震えていた。
そして,苦しみの中,ココは死んでしまった。
火傷の苦しみの中で。
ココは親に苦しめられ,火傷に苦しめられ。
ココは苦しむために生まれてきたのだろうか。
オイラがもっと気を付けていれば,飛べそうに育ったのだから籠に入れれば,ココは楽しい一生を終えられたかもしれない。
オイラには,後悔とココの柔らかい羽毛の感触だけが残っている。
オラの家族 番外編2
『オラの家族 番外編 2 ムサシ』
彼は正確に言うとオラの家族ではない。
隣の家族だ。
10数年前のことである。
オラの隣の家では,柴犬を飼っていた。
名前はムサシ。
ムサシは甘えん坊な犬だった。
外で飼われていたのだが,雨が降るとクンクン鳴いて,家の中に入れてもらうような弱っちい犬だった。
知らない人が来ると,小屋の中でじっと身を潜めている犬だった。
当然,番犬には使えない。
どうも,彼は自分を犬と認識していなかったようだ。
彼の飼い主の子供に対しては,対等の立場で付き合っていた。
オラもその頃は,犬を飼ってなかったので,可愛がっていた。
ある時,オラと嫁は散歩に行くことにした。
ついでだから,ムサシも連れて行った。
行った所は,川だった。
川に行く途中,畑の小道を歩こうとした。
そこには,ごくごく小さな用水路があった。
幅が50cm位のだ。
オラの前を歩いていたムサシは,オラの顔をじっと見つめた。
飛び越えるのが怖いのである。
そこで,オラが軽く飛び越えた。
と言っても,軽く一跨ぎしただけだった。
ムサシはオラの様子を見て,少し,躊躇の表情を浮かべていた。
飛び越えようかどうか悩んでいたらしい。
ついに決心して飛び越えたが,飛び越え方は下手だった。
小脳が未発達なのである。
そして,川に着いた。
オイラは,川べりに行って,コンクリートの飛び石に飛び乗った。
距離にして,約1m位だ。
こんなの屁でもない。
ところが,ムサシは躊躇している。
必死に川の水を凝視しているのである。
彼は彼なりに,飛べるかどうか,川の深さはどうか,安全は確保されているのかと確認していたのだろう。
数分後,ついに彼は決心し,飛んだ。
しかし,現実は厳しかった。
彼は,川に落ちたのである。
しかも,彼の足は川底の泥にはまっている。
身動きできない。
と言うより,身動きしようとしない。
彼は,困った顔をした。
オラは,盛んに綱を引いた。
それでも,彼は足を何とか抜こうと努力をしない。
じっと待っているのである。
オラの顔を見つめて,情けない目をしているだけなのである。
オラと嫁は,何とか,二人がかりでムサシを救出した。
救出された彼は,満足な笑みを浮かべていた。
トラウマになった彼は,決して物を飛び越えようとはしなくなった。
その後,彼を連れて散歩をしなくなったのは,言うまでもない。
彼は正確に言うとオラの家族ではない。
隣の家族だ。
10数年前のことである。
オラの隣の家では,柴犬を飼っていた。
名前はムサシ。
ムサシは甘えん坊な犬だった。
外で飼われていたのだが,雨が降るとクンクン鳴いて,家の中に入れてもらうような弱っちい犬だった。
知らない人が来ると,小屋の中でじっと身を潜めている犬だった。
当然,番犬には使えない。
どうも,彼は自分を犬と認識していなかったようだ。
彼の飼い主の子供に対しては,対等の立場で付き合っていた。
オラもその頃は,犬を飼ってなかったので,可愛がっていた。
ある時,オラと嫁は散歩に行くことにした。
ついでだから,ムサシも連れて行った。
行った所は,川だった。
川に行く途中,畑の小道を歩こうとした。
そこには,ごくごく小さな用水路があった。
幅が50cm位のだ。
オラの前を歩いていたムサシは,オラの顔をじっと見つめた。
飛び越えるのが怖いのである。
そこで,オラが軽く飛び越えた。
と言っても,軽く一跨ぎしただけだった。
ムサシはオラの様子を見て,少し,躊躇の表情を浮かべていた。
飛び越えようかどうか悩んでいたらしい。
ついに決心して飛び越えたが,飛び越え方は下手だった。
小脳が未発達なのである。
そして,川に着いた。
オイラは,川べりに行って,コンクリートの飛び石に飛び乗った。
距離にして,約1m位だ。
こんなの屁でもない。
ところが,ムサシは躊躇している。
必死に川の水を凝視しているのである。
彼は彼なりに,飛べるかどうか,川の深さはどうか,安全は確保されているのかと確認していたのだろう。
数分後,ついに彼は決心し,飛んだ。
しかし,現実は厳しかった。
彼は,川に落ちたのである。
しかも,彼の足は川底の泥にはまっている。
身動きできない。
と言うより,身動きしようとしない。
彼は,困った顔をした。
オラは,盛んに綱を引いた。
それでも,彼は足を何とか抜こうと努力をしない。
じっと待っているのである。
オラの顔を見つめて,情けない目をしているだけなのである。
オラと嫁は,何とか,二人がかりでムサシを救出した。
救出された彼は,満足な笑みを浮かべていた。
トラウマになった彼は,決して物を飛び越えようとはしなくなった。
その後,彼を連れて散歩をしなくなったのは,言うまでもない。
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