小さなクリスマス 1
確か,中学校の頃だった。
英語の問題集の中にあった話だ。
原作者の名前も何もかもが不明である。
あるところに貧しい農家があった。
その年のクリスマスが近づいた頃だった。
母親は3人の子供にこう言った。
「今年はいつもの年に増して貧しいので,クリスマスプレゼントはあげられません」
家庭の事情をよく知っている子供達は,頷いた。
そして,クリスマスイブの日がやってきた。
長男は,今まで少しずつ貯めてきた貯金箱を開けた。
そこには,数セントの硬貨が入っていた。
長男は次男と相談した。
自分達は我慢ができる。
でも,小さい妹には何かしてあげたいと。
次男も賛成した。
そして,数セントを握り締め,3人は街に出掛けて行った。
街は明るかった。
陽気なクリスマスソングも流れていた。
3人は,おもちゃ屋の前で立ち止まった。
「マリー,ご覧。いろんなおもちゃがあるだろう。好きな物を買ってあげるよ」
しかし,手には数セントしか無い。
長男は妹を喜ばせたかった。
どんなものでも買ってあげたかった。
マリーは,ウインドウガラスをじっと見つめた。
その視線の先には,大きな人形があった。
長男の手は緊張で汗を掻いた。
そして,マリーは言った。
「あのお人形の隣にある,青い皿が欲しい」
マリーは人形の側にある小さな青い皿を指差した。
その値段は5セントだった。
早速,3人は店の中に入り,幼い妹に青い小さな皿を買ってあげた。
マリーは喜び,それを見ていた兄たちも喜んだ。
その帰り道,3人を暖かい光が包んでいた。