金曜日, 12月 08, 2006

小さなクリスマス

 小さなクリスマス 1

 確か,中学校の頃だった。
 英語の問題集の中にあった話だ。
 原作者の名前も何もかもが不明である。

 あるところに貧しい農家があった。
 その年のクリスマスが近づいた頃だった。
 母親は3人の子供にこう言った。
 「今年はいつもの年に増して貧しいので,クリスマスプレゼントはあげられません」
 家庭の事情をよく知っている子供達は,頷いた。

 そして,クリスマスイブの日がやってきた。
 長男は,今まで少しずつ貯めてきた貯金箱を開けた。
 そこには,数セントの硬貨が入っていた。
 長男は次男と相談した。
 自分達は我慢ができる。
 でも,小さい妹には何かしてあげたいと。

 次男も賛成した。
 そして,数セントを握り締め,3人は街に出掛けて行った。
 街は明るかった。
 陽気なクリスマスソングも流れていた。
 3人は,おもちゃ屋の前で立ち止まった。

 「マリー,ご覧。いろんなおもちゃがあるだろう。好きな物を買ってあげるよ」
 しかし,手には数セントしか無い。
 長男は妹を喜ばせたかった。
 どんなものでも買ってあげたかった。

 マリーは,ウインドウガラスをじっと見つめた。
 その視線の先には,大きな人形があった。
 長男の手は緊張で汗を掻いた。
 そして,マリーは言った。

 「あのお人形の隣にある,青い皿が欲しい」
 マリーは人形の側にある小さな青い皿を指差した。
 その値段は5セントだった。
 早速,3人は店の中に入り,幼い妹に青い小さな皿を買ってあげた。
 マリーは喜び,それを見ていた兄たちも喜んだ。

 その帰り道,3人を暖かい光が包んでいた。