土曜日, 2月 23, 2008

社長 vol.42

 この間,2chを見ていたら,社長を思い出した。
 それは,古く汚れた10円玉をピカピカにする方法だった。
 2chでは,色々な方法が書かれていたが,社長のやり方は,次の通りであった。
 10円玉をソースに浸すという方法である。
 社長は学食でこの方法をオイラ達に教授してくれた。
 その教授方法が実に社長らしかった。

 何をしたか。
 社長は,学食にあった湯飲み茶碗に10円玉を入れ,その後,ドボドボとウスターソースを入れた。
 いや,入れたというものではない。
 なみなみと注いだのである。
 湯飲み茶碗は溢れんばかりだった。
 そして,その中に指を突っ込み,10円玉を取り出した。
 「あれ?あんまり綺麗にならないですね」
 「もう少し時間を掛けてみましょう」
 「あれ,まだ綺麗にならないですね」
 「もうちょっと置くと綺麗になりますから。先輩」
 時々取り出しては,10円玉を指で擦っていた。
 そして,ウスターソースの付いた指は,口へと運ばれ,最終的には自分のトレーナーでソースと唾液を拭っていた。
 
時が経った。
 時計は12:45。
 そろそろ午後の講義の始まりである。
 オイラ達はあせっていた。
 何故か?
 講義に遅れて行くと,いい席が確保できないからである。
 いい席とは,言うまでも無く教授から最も遠く,見えづらい席のことである。
 オイラ達は不真面目な学生であるからである。

 しかし,そんなオイラ達の思惑とは裏腹に,社長は泰然としていた。
 勿論,KYである。   ・
 いや,正確には「空気を読まない」のである。
 「S,もう行くぞ」
 オイラ達は社長を促す。
 「いや,もうちょっと待って下さい。綺麗になりますから」
 10円玉をコシコシ。指を舐め舐め。
 「もういいって」
 それでも,10円玉をコシコシコシ。指を舐め舐め舐め。
 「いや,本当に綺麗になりますから」
 更に10円玉をコシコシコシコシ。指を舐め舐め舐め舐め。
 「だから,それはこの次でいいって」
 コシコシコシコシコシコシ。舐め舐め舐め舐め舐め。
 「先輩,本当ですから。嘘じゃないですから」
 講義が始まろうが,オイラ達がいい席を確保したい思いを持っていること等,そんなことはどうでもいいのである。
 社長にとって,この時は,10円玉をピカピカにする方法が正しい情報であることをオイラ達に証明するのが,最優先事項であったのだ。
 
 12:55,ついに社長は実験の検証を諦めた。
 ソースのなみなみと入った湯飲み茶碗に指を突っ込み,10円玉を取り出すと,その10円玉を着ていたトレーナーで拭き取った。
 指も同じように拭き取ったのは言うまでもない。
 そして,何事も無かったかのように講義に向かった。
 そんな社長がオイラには理解不能であった。
 理解したくても理解したくなかった。
 オイラは,社長というものから現実逃避をしていたのである。

 社長のいつも着ているトレーナーは,オレンジ色から,迷彩服のような物へと変化していた。
ところどころに茶色の染みが付いていた。
 しかし,そんな服を着ていながらも,社長の顔から得意気な表情は消えなった。
 そう,社長にとって服とは暖かければそれでいいのである。
 「流行の服装に敏感でなければならない,人間は服のセンスが大事だ」そんな脅迫概念に囚われている人は,社長を見習え。
 楽に暮らせるぞ。

日曜日, 2月 17, 2008

たもちゃん 11

 このところ,たもちゃんのところに行けなくなっている。
 オイラが,である。
 嫁は2,3ヶ月毎に行っているのだが。
 理由は,嫁が嫌がるのである。
何故嫌がるか。
答は簡単である。
嫁は実家に帰ると炊事・洗濯・掃除・たもちゃんの世話等等,しなければいけないことが沢山あるのである。
我儘なオイラの面倒まで見切れないということだ。

さきちゃんは,どっちかと言うと家の中のことにはあまり手を出さない。
おおらかなのである。
ちょっと意地悪に言うとあまり家事が得意ではないのである。
どちらかと言うと,苦手であり,へたくそである。
畑仕事や男がするような力仕事は得意なのだが。
勿論,たもちゃんが病気になってから,外の仕事がいっぺんに増えた。
なおさら,家事まで手が回らないのである。

そして,我らがたもちゃん。
一日中テレビをぼーっと眺めている。
オイラが行った時は必ず,ぼーっとテレビを眺めている。
確かに他にすることもないし。

そして,オイラはいうと,たもちゃんの頭頂部を観察する。
全意識を集中させて。
たもちゃんのその頭は,白髪頭のちょっと河童気味の禿。
「うん,夏に来た時より確実に頭髪の本数は減っている」
オイラは堂々として,禿であることを隠さないたもちゃんが好きだ。
巷にはよくいる。
髪が薄いことを物凄く神経過敏になっている人。
無理やりバーコードにしている人。
かっこ悪いのは分かる。
隠したいのは,よく分かる。
自分だって禿よりは禿でないほうがいい。
でも,それって禿よりかっこ悪いと思う。

ここまで書いて,あることを思い出した。
アートネイチャーと言う会社では,お客様に「禿」とは決して言わないそうだ。
「薄毛の方」と呼ぶようにしているらしい。
それが会社の方針であるらしい。
何でこうも日本人というのは差別言葉を無くそうとするんだろう。
別にいいじゃん。
禿は禿だし。
と思っているが,ここからは「禿」という差別用語を使わないようにする。

改めて言う。
たもちゃんは頭髪の不自由な方なのだ。
頭髪の毛根に障害を持つ方なのだ。

実は,たもちゃんには立派な跡継ぎである息子がいる。
「やっち」という。
オイラの義兄である。
そのやっちも,頭髪に障害を持ってらっしゃる。

しかし,たもちゃんの薄毛の部分とやっちの薄毛の部分は微妙に違うのである。
たもちゃんは「河童型」。
やっちは「おでこ開発型」。
所謂「剃りこみ上等!型」。

頭髪の不自由さには,遺伝が大きい原因と聞くが,薄くなる部分も遺伝するものとオイラは思っていた。
今度行った時には,二人の違いをじっくりと観察しようと思っている。
出来れば,画像として残しておきたいと考えている。
こんなオイラは罰当たりかな。