日曜日, 5月 13, 2007

隣の芝生は青い

 「隣の芝生は青い」

 こんな諺がある。

 「隣の芝生は青い」

 他人を妬む人間の心理を表す諺だ。

 ということで,またもやリリーと隣の犬の話。

 今年の4月に引越しをした。

 以前は,近くに犬がいなかったのだが,今回は隣の家に犬がいる。

 ラブラドールである。

 しかし,この犬は実に可愛そうである。

 餌を満足に貰ってないのであろう。

 あばら骨は浮き出て,大型犬なのにうちのリリーのお尻よりも尻が小さい。

 顔だけがいやに大きい。

 体格は中型犬だ。

 ある日,彼はあまりにもお腹がすいたため,銀の餌皿を口に咥えてお座りをしていた。

 何時間も。

 哀れに思った妻と私は,飼い主のいないことを確認し,餌をあげた。

 何せ,ゴールデンウイークの真っ最中で,餌をもらえる確率は0に等しかったからである。

 一番安い,粒状の餌を上げた。

 貪るようにして食べている。

 いや,食べているというより,飲み込んでいる。

 あまりに急いで飲み込むものだから,時々吐いてしまう。

 それでも,吐いた物までしっかりと食べていた。

 食べ終わった後は,お礼のつもりなのか,お腹を見せて寝転がって尻尾を振っていた。

 お腹を撫ぜると目を細めて喜んでいた。

 他にも,彼の哀れな様子が窺える。

 繋がれている紐も,ワイヤーのような細い頑丈な紐で,首に食い込んでいる。

 「首輪」ではない。

 ただのワイヤーである。

 しかも,長さは2m位しかない。

 小屋は小型犬用の小屋で、ラブ(勝手に命名)が入ったなら顔が出てしまうくらい小さい。

 散歩にも連れて行ってもらえないのだろう。

小屋の周りには,糞が無数に転がっている。

下の世話もしてもらっていない。

だから,ラブの体はべたついていて,臭い。

 妻と私の間では,次の決まりを設けた。

1.飼い主に見つからない様に餌をあげる

2.そのうち,飼い主が長い間いない時を見計らって穴を掘り,糞を埋める

3.出来ればシャンプーもしてあげる

 こうして,我が家の隠れ家族が1匹増えた。

 リリーはと言うと,度々食物を持って家を出て行くのが気に入らないらしい。

 そして,帰って来た時には,他の犬の臭いがするのを不審がってる。

 散歩に行く時にいつもラブに会うのだが,いつも挑戦的な態度である。

 リリーにとってラブに置かれた状況が「隣の青い芝生」に見えるのだろう。

 食べたくない物は無視をし,いつでも水が飲める。

 人間が食す美味しい食物のおこぼれも頂戴できる。

狭いながらも,家の中は自由に歩ける。

 散歩も日に2回,定期的に連れて行って貰える。

 いつも誰かに構って貰える,彼女にとってそれはあまり嬉しくないことだろうけど。

 人間とは,いや動物とは勝手な者である。

 それでも,「隣の芝生は青い」のである。

 実際はラブがリリーの状況を「青い芝生」と感じているだろう。

 それが正しい「隣の芝生は青い」の使い方である。