「隣の芝生は青い」
こんな諺がある。
「隣の芝生は青い」
他人を妬む人間の心理を表す諺だ。
ということで,またもやリリーと隣の犬の話。
今年の4月に引越しをした。
以前は,近くに犬がいなかったのだが,今回は隣の家に犬がいる。
ラブラドールである。
しかし,この犬は実に可愛そうである。
餌を満足に貰ってないのであろう。
あばら骨は浮き出て,大型犬なのにうちのリリーのお尻よりも尻が小さい。
顔だけがいやに大きい。
体格は中型犬だ。
ある日,彼はあまりにもお腹がすいたため,銀の餌皿を口に咥えてお座りをしていた。
何時間も。
哀れに思った妻と私は,飼い主のいないことを確認し,餌をあげた。
何せ,ゴールデンウイークの真っ最中で,餌をもらえる確率は0に等しかったからである。
一番安い,粒状の餌を上げた。
貪るようにして食べている。
いや,食べているというより,飲み込んでいる。
あまりに急いで飲み込むものだから,時々吐いてしまう。
それでも,吐いた物までしっかりと食べていた。
食べ終わった後は,お礼のつもりなのか,お腹を見せて寝転がって尻尾を振っていた。
お腹を撫ぜると目を細めて喜んでいた。
他にも,彼の哀れな様子が窺える。
繋がれている紐も,ワイヤーのような細い頑丈な紐で,首に食い込んでいる。
「首輪」ではない。
ただのワイヤーである。
しかも,長さは2m位しかない。
小屋は小型犬用の小屋で、ラブ(勝手に命名)が入ったなら顔が出てしまうくらい小さい。
散歩にも連れて行ってもらえないのだろう。
小屋の周りには,糞が無数に転がっている。
下の世話もしてもらっていない。
だから,ラブの体はべたついていて,臭い。
妻と私の間では,次の決まりを設けた。
1.飼い主に見つからない様に餌をあげる
2.そのうち,飼い主が長い間いない時を見計らって穴を掘り,糞を埋める
3.出来ればシャンプーもしてあげる
こうして,我が家の隠れ家族が1匹増えた。
リリーはと言うと,度々食物を持って家を出て行くのが気に入らないらしい。
そして,帰って来た時には,他の犬の臭いがするのを不審がってる。
散歩に行く時にいつもラブに会うのだが,いつも挑戦的な態度である。
リリーにとってラブに置かれた状況が「隣の青い芝生」に見えるのだろう。
食べたくない物は無視をし,いつでも水が飲める。
人間が食す美味しい食物のおこぼれも頂戴できる。
狭いながらも,家の中は自由に歩ける。
散歩も日に2回,定期的に連れて行って貰える。
いつも誰かに構って貰える,彼女にとってそれはあまり嬉しくないことだろうけど。
人間とは,いや動物とは勝手な者である。
それでも,「隣の芝生は青い」のである。
実際はラブがリリーの状況を「青い芝生」と感じているだろう。
それが正しい「隣の芝生は青い」の使い方である。