ルシファー
彼の望みは、全てだった。
完全なる全てだった。
自分の力を果てしなく求めた。
完全な自分でありたかった。
彼は白い翼を折った。
頭部に角を付けた。
尻尾も付けた。
それは、天使から悪魔への変容だった。
彼が去るのを神は許さなかった。
しかし、神は何も言わなかった。
神は、彼を消滅することだけを考えた。
いかに手際よく。
やがて、神は人間を造った。
人間は神に従った。
神は人間をエデンに住ませた。
神は、一つ、ルシファーへの攻撃の武器を手に入れた。
何故だ?
何故に、人間は知恵の実を食べたのだ?
神は信じられなかった。
自分の造った物は完全だと考えていた。
これが神の誤りだった。
完全な誤りだった。
神は後悔した。
それも、激しく。
ルシファーは、一つ、武器を手に入れた。
それは、人間だった。
人間は彼の囁きに耳を傾けた。
人間は、ルシファーの道具になった。
神は怒り、ルシファーは、ほくそ笑んだ。
人間はよく働いた。
ルシファーを崇拝した。
そして、彼はいつからか、サタンと名乗るようになった。
しかし、人間はまたもや変貌した。
神に仕える者と悪魔を崇拝する者に二分した。
善い者と悪しき者に別れた。
そして、神と悪魔の戦いは人間が代理するようになった。
サタンは完全な自分になることを確信した。
人間はよく働いた。
彼の計算に間違いは無かった。
人間はやがて神を殺した。
サタンは角を取った。
尻尾も取った。
白い翼を背中に付けた。
彼は美しくなった。
白く輝くルシファー。
彼はもう何も望まない。
彼は完全になった。
彼は満足して、消滅した。
人間だけが残った。
神は死んだ。
悪魔は消滅した。
今、カオスが渦を巻いている。