土曜日, 2月 10, 2007

『オラの家族 Vol.13 ユカ』

 『オラの家族 Vol.13 ユカ』

 もう1回娘の話だ。

 もう10年位前のことであろうか。
 娘も3歳くらいで可愛い盛りだった。
 夏季休暇に家族旅行に出掛けた。
 と言っても道北から道東への短い小さな旅行だ。
 1日目は、オイラが以前住んでいた日高のS町へ向かった。
 予約していた温泉で、温泉に浸かり夕食を食べた。
 娘にはお子様ランチを用意した。
 ユカは喜んで小さな手を叩いていた。
 オイラと嫁は満足だった。

 次の日、十勝のO市のテーマパークに行った。
 そこでもユカは喜んで遊んでいた。
 でも、一人っ子の所為で遊ぶ相手はオイラと嫁しかいなかった。
 ユカは様々なアトラクションにはあまり興味を示さなかった。
 それはそうであろう。
 まだ、3歳なのだから。
 ユカは砂や土いじりが大好きな子供だった。
 テーマパークでも土をいじって遊んでいた。
 彼女は彼女なりに楽しんでいたのだと思う。

 この日の夜、嫁の友達の家に行った。
 その家族も5歳と3歳の女の子がいた。
 オイラと嫁は、きっと仲良く遊んでくれると楽しみにしていた。
 
 その子達は悪くない。
 幼い子供であるから仕方ない。
 それは分かっていたのだが・・・

 嫁の友達が子供用のパソコンを出してくれた。
 娘は初めて見るものに興味を示していた。
 最初はその姉妹が遊んでいた。
 ユカは眺めていた。
 そして、ユカが遊べる番になった。
 ユカは使い方が分からないながらも遊ぼうとする。
 すると、その姉妹はユカから離れ、オイラの所へ来て別の遊びをしようと言い出した。

 なぜかその姉妹にオイラは人気があった。
 オイラも嫁の友達の手前である以上、遊んでいた。
 その間、ユカは一人パソコンで遊んでいた。
 嫁の友達が「一緒に遊びなさい。遊び方を教えてあげなさい」と言ってもオイラの傍から離れることは無かった。
 ユカの傍による事は無かった。
 無邪気に、何も知らずに遊ぶ娘の姿に心がちくりとした。

 次の日、みんなで動物園に行く事にした。
 車を降りて、みんなで歩いた。
 姉妹は、はしゃいで走り回った。
 その後ろを一生懸命に追いかけるユカ。
 姉妹が立ち止まって、地面を見た。
 娘も一緒に見ようとした。
 ユカが近づいた途端、姉妹はユカを置いて走り去った。
 また、姉妹を追いかける娘。

 そんなことがずっと続いた。
 オイラは予感していたが、認めたくはなかった。
 「ユカはこの姉妹に嫌われている」という事実を。
 動物に餌をあげるのも、乗り物に乗るのも姉妹は一緒。
 ユカは別。

 ユカは何も知らずに土いじりをしていた。
 何も知らず。
 何が起こっているのか気付かずに。
 オイラの心はちくちくとした。

 そんな旅行から帰ってきて、娘は熱を出した。
 娘も頭では分からないながらも何かを感じていたのだろうか。
 その姉妹は、娘をいじめたわけではない。
 その子達を責めることはできない。
 でも、今でもオイラと嫁の心から、この出来事を消すことができない。
 せめて、ユカは何も覚えていないことを願うばかりだ。

 そんな娘も、今年は中学に入学する。
 友達を沢山作ってくれたら、何も望まない。
 天よ、善き配剤を。