土曜日, 8月 25, 2007

胡桃の樹の下で 7

   7

目をさますとくらかった。

おなかがすいた。

でも、ママはいない。

だいどころに行った。

だいどころは、いつものようにきたなくてくさかった。

れいぞうこをあけた。

中には、ビールしかなかった。

いつもパパやママがのむやつ。

食べものはなにもなかった。

すいはんきをあけた。

少しだけど、ごはんが入っていた。

しゃもじでごはんをすくって、ちゃわんに入れた。

ぱりぱりと音がした。

ぱりぱりのごはんにしょうゆをかけて、食べた。

ぽりぽりと口の中で音がする。

かたくてなかなかかめない。

でも、おなかがすいていたので、食べた。

もっと食べたい。

でも、ごはんはもうない。

外では、あかやきいろの光がチカチカしていた。

ママもパパもかえってこない。

ボクはひとり。

金曜日, 8月 24, 2007

胡桃の樹の下で 6

   6

 ボクはうたを思いだした。

 なんていう、うただったかな。

 そうだ。

 シャボンだまだ。

 

 しゃぼんだま とんだ

 やねまで とんだ

 やねまで とんで

 こわれて きえた

 かぜ かぜ ふくな

しゃぼんだま とばそう

ボクは小さな声でうたった。

木もさらさらとゆれて、いっしょにうたっているようだった。

なんだかちょっとかなしくて、うれしかった。

べつべつのきもちがまざって、なんだかへんな気分だった。

そして、木からおりた。

なんだかまたねむくなちゃった。

はっぱのふとんでまたねた。

木曜日, 8月 23, 2007

胡桃の樹の下で 5

   5

 ママがボクになにか言ってる。

 ママのかおは、おにのようだ。

 目がつりあがっていてこわい。

 ボクはおしいれの中ににげた。

 ママがあけられないように、力いっぱい、戸を手でおさえた。

 ママが力をこめて戸をあけようとしているのがわかる。

 ボクはひっしで戸をおさえた。

 でもだめだった。

 ママのほうが力があった。

 戸はあいてしまった。

 ボクはおしいれからひっぱりだされる。

 ママがボクをなぐる。

 ボクはいっしょうけんめいあやまる。

 でも、ママはなにもきいてくれない。

 なんかいもなんじっかいもボクをたたく。

 ボクはいたくて、かなしくて、なみだをぽろぽろとこぼした。

 いたさもそんなにかんじなくなったとき、ママはボクをたたくのをやめて、へやを出て行った。

 ボクはねころがったまま。

 目をさますと、ボクの目になみだがついていた。

 ボクは手でそのなみだをふいた。

 木はかぜにゆられて、ざわざわといっていた。

 なんだかボクをはげましてくれているようだった。

 ボクはヘルメットをもっていずみに行った。

できるだけたくさんの水をくんだ。

でも、木のところについたときには半分くらいにへっていた。

その水を木にかけてあげた。

木がさわさわといった。

おれいを言っているようだった。

なんだか、木がもっとそばへおいでと言っているようだったので、木にのぼってみた。

木にのぼるのははじめてじゃない。

前にもこうえんの木をのぼったことがある。

この木よりももっと小さかったけど。

いちばん下のえだをしっかりと手でつかんだ。

そして、こぶになったところに足をかけた。

大きいけれど、のぼるのはそんなにむずかしそうじゃない。

 けっこうかんたんにのぼることができた。

 木の上から見えるけしきはよかった。

 ずっとずっとむこうまで見えた。

 でも、ずっとずっとむこうにはなにも見えなかった。

 どこまでも、原っぱが広がっていた。

 

水曜日, 8月 22, 2007

胡桃の樹の下で 4

   4

 ボクは水をくむものをさがしにいった。

 原っぱの中を、なにかないかと思ってさがしまわった。

 いろいろさがした。

 原っぱがとぎれたところに白いものがおちていた。

 ヘルメットだった。

 ヘルメットには、金色のぎざぎざのバッジがついていた。

 むずかしいかんじもかいてあった。

 「北海道警察」

 よくわかんない。

 でも、水をくむのにちょうどいい。

 こんどからはこれをつかおう。

 ボクはヘルメットをだいて木にもどった。

 なんだか木もボクをしんぱいしていたような気がする。

 たくさん歩いたのでつかれた。

 ボクはねることにした。

 木がおとしてくれたはっぱにもぐりこんでねた。

火曜日, 8月 21, 2007

胡桃の樹の下で 3

   3

 先生がなにか言ってる。

 ボクのかおをじっと見てなにか言ってる。

 先生の声がよくきこえない。

 でも、なんだか先生はおこっているようだ。

 まわりのみんなはボクのほうをじっと見ている。

 ボクはなにもわからないからじっとしている。

 先生がボクのそばに来た。

 そして、きょうかしょでボクのあたまをたたいた。

 なんでたたかれたのか、わからない。

 そんなにいたくはなかったけれど、なみだがでた。

 まわりのみんなはボクをばかにしたような目で見ているだけ。

 ボクの心はちくりとした。

 そこでゆめがさめた。

 おきあがろうとすると、がさがさという音がきこえた。

 ボクの上には、たくさんのはっぱがのっていた。

 ねるまえには、はっぱがなかったから、ねているうちにボクをつつんでくれたんだろう。

 はだざわりはよくないけれど、とてもあたたかかった。

 ボクははっぱをどけておきあがる。

 木に水をあげなくっちゃ。

 きっと木ものどがかわいてるはず。

 ボクはいずみに行って手のひらで水をくんできた。

 そしてそっと木のねもとに水をあげた。

 なんかいも水をあげた。

 ちょっとつかれた。

ボクも水をのんだ。

 でも、この木は大きいからもっと水をあげなくちゃ。

 もっといっぺんにあげることができないかな。

月曜日, 8月 20, 2007

胡桃の樹の下で 2

   2

 今日からボクはここにすむことにした。

 この木といっしょ。

 なんだかこの木はボクを守ってくれそうな気がしたんだ。

 ボクは木に水をあげる。

 木はボクにすずしいこかげをつくってくれる。

 キョウゾンキョウエイというのかな。

 ボクはこの木がすきだし、きっとこの木もボクのことをすきだと思う。

 ボクはきっとこの木を守るためにここに来たのだと思う。

 もしかしたら、この木がボクをよんだのかもしれない。

 どっちにしてもボクはかまわない。

 ボクはこの木がすきだし、ずっとここにいようと思ってる。

 なんだかねむくなってきた。

 ずっと歩いたし、この前、いつねたのかもおぼえていない。

 ちょうど少し木のくぼんだところがある。

 ここでねよう。

日曜日, 8月 19, 2007

胡桃の樹の下で 1

   胡桃の樹の下で

 ボクは、いつからここにいるのかわからない。

 気がついたらここにいた。

 ここはあたたかで、きもちがいい。

 ときどきふく風もつめたくない。

 ここはとっても広い。

 いくら目をこすったって見えるのは地平せんだけだ。

 ボクは原っぱをずっと歩いた。

 なんじかんも。

 ときどき、休んだ。

 ここにはいろんな所にいずみがある。

 つめたくてすきとおったきれいな水だ。

 ボクはその水を手のひらですくってのんだ。

 とてもおいしい。

 3回休んだとき、むこうになにかが見えた。

 ちかづいていくと、それは大きな木だった。

 ボクは木の下までいった。

 その木は大きくてりっぱでたくましかった。

 なんだかボクはその木がすきになった。