5
ママがボクになにか言ってる。
ママのかおは、おにのようだ。
目がつりあがっていてこわい。
ボクはおしいれの中ににげた。
ママがあけられないように、力いっぱい、戸を手でおさえた。
ママが力をこめて戸をあけようとしているのがわかる。
ボクはひっしで戸をおさえた。
でもだめだった。
ママのほうが力があった。
戸はあいてしまった。
ボクはおしいれからひっぱりだされる。
ママがボクをなぐる。
ボクはいっしょうけんめいあやまる。
でも、ママはなにもきいてくれない。
なんかいもなんじっかいもボクをたたく。
ボクはいたくて、かなしくて、なみだをぽろぽろとこぼした。
いたさもそんなにかんじなくなったとき、ママはボクをたたくのをやめて、へやを出て行った。
ボクはねころがったまま。
目をさますと、ボクの目になみだがついていた。
ボクは手でそのなみだをふいた。
木はかぜにゆられて、ざわざわといっていた。
なんだかボクをはげましてくれているようだった。
ボクはヘルメットをもっていずみに行った。
できるだけたくさんの水をくんだ。
でも、木のところについたときには半分くらいにへっていた。
その水を木にかけてあげた。
木がさわさわといった。
おれいを言っているようだった。
なんだか、木がもっとそばへおいでと言っているようだったので、木にのぼってみた。
木にのぼるのははじめてじゃない。
前にもこうえんの木をのぼったことがある。
この木よりももっと小さかったけど。
いちばん下のえだをしっかりと手でつかんだ。
そして、こぶになったところに足をかけた。
大きいけれど、のぼるのはそんなにむずかしそうじゃない。
けっこうかんたんにのぼることができた。
木の上から見えるけしきはよかった。
ずっとずっとむこうまで見えた。
でも、ずっとずっとむこうにはなにも見えなかった。
どこまでも、原っぱが広がっていた。