木曜日, 9月 11, 2008

久し振りの「社長」です

 『社長 vol.44』

 社長は強運の持ち主だった。
一般的生活は底辺層に近いのだが、時折勝負強いところを見せてくれる。
金に固執する態度が福の神を招き寄せるのであろうか。
社長は2度ハワイに行ったことがあった。
しかも只である。
1回目のハワイ旅行はクイズ番組で優勝して行った。
かなり昔の(30年ほど昔か?)、しかもあまり視聴率の高くない番組であった。
確か番組名は「トラベルチャンス」だったように思う。
関口宏が司会者で、日曜の午前10時頃に放送されていたように思う。
このクイズ番組はちょっと変わっていて、出された問題を解答者が順番に答えていくものだった。
分からなかったら次の解答者に答える権利が生まれる。正解だったらまた次の問題に解答する権利が与えられる。
そしてあるポイントに達すると優勝となる。今思えば(今でなくとも)もうグダグダの展開のクソ面白くない番組であった。
しかし社長は高校生であるにも拘らず優勝を勝ち取ったらしい。
そして、ハワイ旅行をゲットした。らしい。
「いやあ~先輩。あのクイズ番組はぬるぬるですから楽勝ですよ。O君(オイラ)も雑学が得意だから、出たらすぐにハワイに行けますよ。いっひっひっひっひ」
そのハワイ旅行では何をしたか詳しく聞くことは無かった。
まあ、どうせくだらないことをしていたに違いない。

そして、大学3年の時にそれは起こった。
またしても社長はハワイ旅行をゲットしたのだった。
その頃オイラの友達の多くが、あるバイトをしていた。北海道に住んでいる人にはすぐに分かる大手企業だった。
その頃のバイト先は急成長を遂げている真っ最中で、羽振りがよかった。
何せ時給が1500円以上であった。毎日のバイトではなかったため月給は大したことは無かったが夏休みや冬休みは10万を越えることが当たり前だった。
そんな急激に業績を伸ばしている企業は、太っ腹で、業績が大幅にアップしたことがあって、数名をボーナスとしてハワイ旅行に招待してくれたことがあった。
オイラ達の支部も3名が行けることになった。
その頃の事業所には50名程のバイト、正社員がいた。
確率は3/50。
言わなくても分かるだろう。
社長は見事にと言うか、当たり前にとでも言うか、当たりくじをゲットした。
オイラ達は社長に「2001円 ハワイの旅(2001年 宇宙の旅のパクリ)」と言う名目でそれぞれ2001円を餞別として送った。
勿論、社長はその選別を当たり前のように受け取ったのは言うまでもない。

さて、ここまで読んだ人は社長のハワイでの行動、つまりは観光について詳しく知りたいであろう。
書きます。
先ず、出掛けるときの服装が斬新であった。
ハワイに遊覧目的で行く人には到底見えぬ出で立ちであった。
スーツである。
ネクタイを締めて。
その姿は、社長らしくない。
いや、社長らしさの極致かもしれない。

社長はハワイに行く必要は全く無かった。
国内で十分であった。
いや、旅行にさえ行かなくてもよかったと言える。
社長は2回目のハワイで何をしたか。
ポルノ映画を見て過ごした。   らしい。
その映画も裏ビデオで有名な「洗濯屋ケンちゃん」であった。
社長はこう語った。
「いやあ~。日本で裏ビデオを見るには結構、金が掛かりますからね。ハワイでは映画館でやっているから安いんですよ。いっひっひっひっひ」
「いやあ~。先輩にも見せてあげたかったですよ」
うるさいって。

社長は、ビーチでのんびりとか観光とかガンシューティングクラブに行ったりとかせずに、連日ポルノ映画を見たらしい。
ハワイでポルノ映画三昧。
確かに社長らしい。
ビーチで優雅に読書するなんていうのは全然合わない。

しかし、我々は失望した。
何に対してか?
お土産に対してである。
社長がハワイに行く。つまりはアメリカに行くのである。
お土産はやはり無修正ポルノ雑誌が正等ではないだろうか?
社長の買ってきた物はすべてどうでもいい物ばかりであった。
社長自身用のポルノ雑誌を除いて。