月曜日, 5月 14, 2018

『たもちゃん vol.14』

  たもちゃんのお通夜の時だった。
 オイラは御近所さんの人と長く話しこんでいた。
 その人はPCに詳しく、オイラもPC好きだから話は色々と盛り上がって随分と話しこんだ。
 その人はお酒を飲まない人で、飲み物もブラックコーヒーを好んでいたので、時々斎場の自動販売機で買ってきていた。
 通夜振る舞いの飲み物の中にコーヒーが入っていなかったからだ。
 コーヒーを買いには数度行ったのだが、丁度丑満つ時の頃に行った時にそれは起きた。
 自動販売機はホールに有るわけだが、そこに電話機があった。
 まあ、どこの斎場でもそんな事は当たり前だと思う。
 コーヒーを2、3本買って通夜の部屋に帰ろうとした時、不意に電話が鳴った。
 無視をしようと思ったが、その電話はいつまでも鳴り続けた。
 オイラは不気味なものを感じながらも、無視してはいけないような気がした。
 それでオイラは電話に出た。
 しかし、こちらから話し掛けても何の音も声もしなかった。
 これで、たもちゃんの声が聞こえたら話が上手く纏まるのだが、そういうわけにはいかなかった。
 オイラは心霊的なものを信じている。
 と言うより、死後の世界があって欲しい、肉体は朽ちても意識は存在し続けて欲しいと願っている。

 この話をすると色々な人から 「きっとたもちゃんからの電話だよ。きっとお礼が言いたいんだよ」と言われる。
 もしそうなら、嬉しくもあり、また同時にたもちゃんの声がしなかったからそんなわけはないという気持ちも持っている。
 特に奇妙な話でもないが何となく心に引っかかっているのである。