『社長 vol.38』
社長は,ほとんど変態と言ってもおかしくない性癖の持ち主であったが,誰からも好かれていた。
特に,ゼミの教授に可愛がってもらっていた。
その教授は,独身女性であった。
もしかすると,一見とっつぁんぼうや的な風貌が母性本能をくすぐったのかもしれない。
社長は,人物批判に於いて一目置かれていた。
ある講義の時だった。
その時の講師は,社長のゼミの教授だった。
隣に座ったN2が社長に何か書いて渡した。
「今日のチャコ(教授の名はヒサ子だった)の服装を解説・批判せよ」
社長は,一心不乱に書き込んでいた。
勿論いつものように,左手でぎこちなく。
出来たその論文は,素晴らしいものであった。
「まず,服の下地が白である。これは,彼女の清廉・純潔を表すと同時に,いつでも貴方とならOKよというサインでもある。これを放って置く手は無い。君は果敢にアタックをすべきである。
「第2に,服の柄である椰子の木の葉等は,まさにトロピカルを髣髴させ南国情緒を醸し出している。と同時に南国特有の自由恋愛と情熱をも表している。これも異性に対する自己アピールである。即刻行動に出るがマナーというものであろう。
「第3に,柄の葉の色は緑である。緑は自然を最も表す色彩である。言うまでもなく,これは屋外での行為を望んでいるのである。しかも積極的に。青空の下での行為が彼女の嗜好なのであろう。
「第4に,スカートの赤が述べていることは,言うまでもなく情熱である。深い愛情である。と同時に処女喪失の時の証の色とも読み取れる。つまりは,私のすべてを貴方に捧げますという彼女の決意の表れである。君はその決意を真摯に受け止めるべきである。
「総合的に見て,今日の彼女は積極的で情熱的である。この講義が終了した後,果敢に彼女を誘い出すべきであろう」
と,大体このようなことを書いていた。
何につけても社長はN2とチャコをくっつけようとしていた。
自分の方がずっと可愛がられているにも拘らず。
そう,社長は誰に対しても性的な側面から心理を解析するという性癖の持ち主であったのだ。
社長の教授の服装に対する心理分析はその後も行われた。
しかし,残念ながら先程のレポート以上のできのレポートは出来なかった。
やはり,社長もどこかでチャコのことが好きだったのかもしれない。
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