『オラの家族 Vol.16 ハナ』
オラに新しい恋人ができた。
家族ではないが準家族くらいにはなると思う。
名前をハナという。
古風な名前だが,年齢は不詳である。
彼女との出会いは不図したことからだった。
リリーの散歩中に出会ったのだ。
彼女の容貌はポメラニアンぽい。
で,ちょっときかなそうな顔つきである。
体の毛はぼさぼさしていて,触り心地はあまり良くない。
体格も小さい。どこから見ても雑種である。
彼女は,最初はこちらを警戒していたし,リリーに向かって威嚇攻撃をかけた。
リリーは肝っ玉が小さいので吼えるだけだが,ハナはリリーを齧った。
それ以来,リリーは半径3m以内には近づこうとしない。
また,お互いに不可侵条約を結んだのか永世中立の道を選らんだのか知らないが,お互いに相手を無視し,吼えることも無くなった。
オラは今,ハナに首っ丈である。
はっきり言ってリリーといるより,ハナといるほうが楽しい。
理由は簡単である。
リリーは自分に都合のいい時しかこちらに寄って来ない。
まあ,身勝手な犬である。
もしかして猫の生まれ変わりではないだろうか。リリーは。
その点,ハナは可愛らしい。
体を擦り付け来たり,尻尾をぶんぶんと振る。
やはり犬はこうでなくてはいけない。
リリーのような犬は犬の地位を貶めるだけである。
ハナには毎日,ソースカツを与えている。
と言っても駄菓子の一種で,魚肉の周りに衣をまぶして揚げた代物である。
ハナはこれが大好物である。
もう,野生に帰ってがふがふしながら食う。
食べるではない。食うである。
リリーは食べ物を手に載せてあげても,手を齧らないように細心の注意を計らって食べる。
ハナはそうじゃない。
手ごとカツを食べる。
まあ,今のところ強く噛まれたことはないが。
彼女との逢引の時,リリーはいつも背中をこちらに向けて座っている。
彼女なりの反抗,やきもちの表現なのだろうか。
ハナのちょっと嫌なところはウンモ食いをすることである。
ウンモを食った口でオラの手からソースカツを食う。
ちょっとどころではない嫌さだ。
それでも,毎日のように彼女の元へ訪れる。
どうも,恋に狂った中年男である。
金曜日, 6月 06, 2008
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