土曜日, 11月 18, 2006

社長 6

 『社長 vol.6』

 そうそう,思い出した。
 あれは5月の花見のことだった。
 (北海道では花見は,時期的に5月に行う)
 俺や社長が属していたゼミも5月の連休後に花見を行った。

 花見の場所は一応A市の桜の名所でもあるK公園だった。
 K公園はちょうど駅の裏側に位置していた。
 大学からはちょうど市の裏側に当たり,交通の便が不便だった。
 そのため,ジンギスカンをするための食料,飲み物,ガスボンベ,鍋など重くて持ちにくい物はすべて1年生の持ち物だった。
 当然,社長も俺も持ちにくい物を持って,花見の公園までバスを乗り継いで行った。
 しかし,社長と俺は,重いけれど帰りは楽になる飲み物と食料を運んだ。

 花見を始めたのは,午後の1時頃。
 平日の真昼間ということもあって,公園は我々の貸切状態だった。
 教授を交え,真面目な花見は滞りなく進んでいった。
 社長は時々,アンコールに答え,『カポ』をやっていた。
 そして,教授たちは普通に帰った。

 事件が起きたのは,花見の帰りのことだった。
 酔いの勢いに任せて,我々は歩いて帰ろうとしていた。
 そして,駅の裏側に着いたときだった。
 A市は駅の入り口が一つしかない。
 駅の裏から大學に帰るには,遠回りの道を選ばなければならない。

 しかし,我々には強い味方がいた。
 酔いである。
 酔いの勢いで,駅の構内を横切ることを決意した。
 全員一致で。
 線路は,10線以上ある。
 幅は優に100mは超えている。
 我々はゲリラの様に草むらに隠れ,辺りを見渡す。
 駅員がいないのを確認し,我々は走った。
 そして,駅を横切るのに成功した

かに見えた。

 後ろを振り返ると社長が線路の上に転んでいる。
 転んだ瞬間に口からアルコールの混じった汚物を噴出したようだ。
 我々は,全員,駅を横切る時よりもスピードを上げて,その場から逃げた。
 その後の社長の処遇については,我々は一切関知しない。

0 件のコメント: