『たもちゃん vol.5』
たもちゃんの背中。
それはそれは,大きな背中であった。
パーキンソン病に冒された今となって,その事がつくづく身に沁みる。
何が大変だって,たもちゃんを風呂に入れるのが大変だ。
まだ,オイラは1回しか入れてないが,ほとほと参った。
約90kgの肉体である。
これには参る。
ただでさえ,滑る風呂場である。
自分一人でさえ,滑って危なっかしいのに,更に90kgの肉体を支えなければならない。
オイラが滑って頭でも打ったら,嫁と娘が困る。
たもちゃんなら・・・
困る人はいないか?
ならいいか。
いや,良くはない。
自分の目の前で死人が出るのは,あまり喜ばしい事ではない。
ましてや,岳父だ。
寝覚めが悪そうだ。
あのがたいで,夢枕に立たれた日にゃあ,こちらとしてもやる瀬がない。
それでも,パーキンソンと診断され,介護施設にお世話になるまでは,家で入れていた。
義母と嫁が。
オイラは,寝転がってビールを飲んでいるだけだから,楽だった。
真冬でも,義母も嫁も汗だくであった。
真夏になると,もう無理だ。
湯船には浸からせない。
シャワーのみである。
これでも汗を掻く。
サウナ以上に。
最初は,たもちゃんも『jr.』を見られるのを恥ずかしがっていたが,途中からは平気そうだった。
また,たもちゃんの「おピーーー」が「ピーーー」で「ピーーー」なのである。
だから,オイラは,たもちゃんの「おピーーー」が「ピーーー」になる瞬間,目をそらしていた。
したがって,近頃は特別な事がない限り,アバンテで入れてもらう。
これが週に2回だ。
週に2回じゃ,ちょっとたもちゃんがかわいそうだが,仕方がない。
狭い,家の風呂に入れるには,あまりにもたもちゃんのガタイがよすぎるのだ。
過ぎたるは,尚及ばざるが如し。
逞しかった体が,今ではもてあましだ。
義母も嫁もそのことを痛感している。
でも,一番痛感しているのは,たもちゃんかもしれない。
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