『社長 vol.13』
これも3年目のことである。
我々植物生態ゼミは,野外実習をするべく夏休みにもかかわらず,大雪山の研究所に行った。
その時の出来事を記す。
※ 食事中の方は,食事を終えてからご覧下さい。
それは,1日目の夕食を作っている最中の出来事だった。
毎年毎年,飽きもせず夕食は豚汁だった。この年も例年の如くそうであった。
女子大生がせっせと夕食作りに励んでいるところにやってきたのは,社長である。
女に近寄りたがっていたのもあるが,彼の全身を覆う脂肪の元であるつまみ食いをするためだ。
豚汁に止まった社長の目がきらっと光った。
そして,おもむろにお玉で豚肉を掬い上げると,がぶっと口に含んだ。
「むごむご・・・。くちゃくちゃ・・・」
また太るって・・・
「ごぼうの出汁が利いてて・・・」
講釈垂れるなよ・・・
「なかなかいいお味です・・・」
分かったって・・・もう・・・
「くちゃくちゃくちゃ・・・」
そして,社長は二口目をお玉から口中に投じた
その瞬間である。
社長は,肉を吐き出した。
「げっ。豚肉がまだ生でした。いっひっひっひ」
「豚肉は火が通ってないと駄目なんだよね。いっひっひっひ」
勿論,口から吐き出した豚肉をお玉ごと鍋に戻したには言うまでもない。
・・・やられた・・・完全に社長の勝ちだ・・・
夕食では,目撃者だったオイラとS(一応♀・・・すごくブス。性格もブス)を含む女子大生たちは,豚汁を口にしなかった。
次の日の登山の途中でH(♂ 元サッカー日本代表の監督,岡田にそっくり)が,嘔吐を催した。
「俺,何か悪いもん食ったかな?」
そりゃそうだ。豚汁3杯もおかわりしたも・・・
社長の口にいったん入った豚肉を食べた確率は12%以上もあるも・・・
Hの嘔吐の原因は,社長の口に入った豚肉を食べたことだろうとオイラたちは噂した。
当然,この噂は社長の耳にも届いたのだろうが,そんなことを気にする社長ではなかったのは言うまでもない。
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