『社長 vol.14』
これも3年目の野外実習のことである。
2日目の真昼間の実習中の出来事を記す。
野外実習とは,毎年大雪山を徒歩で登り(ロープウエイがあるにも拘らず),各地域における植物生態を研究するのが目的だ。
ここでHが,嘔吐した件は先にも述べたので,割愛する。
それは,天女ヶ原での出来事だった。
我々はそれぞれグループに分かれて植物生態の実習を行った。
我々のグループにはオイラの他に,社長,O(♀ 美人),先輩のOさん(♂)後輩のI(♂)がいた。
O先輩の指示で我々はすばやく生態観察実験を行った。
言い方を変えるとさっさと実習を終わらせたかっただけである。
まずは,方形枠の中の植物の種類を数えた。
全部で32種。昨年より増えているらしい。
植物に関心を持っていないオイラにはどうでもよかった。
しかし,ここで社長が持ち前の博学を広しめた。
O(♀ 美人)は,オオイヌノフグリを手にしてこうみんなに聞いた。
「ねえねえ,オオイヌノフグリの『フグリ』って何?」
我々は,答えを知っていたがあえて無視していた。
「ねえ,社長,『フグリ』って何?」
Oは,社長に答えを求めた。
Iも,興味津々である。さすがは理科の学生である。
「Oさん,Oさん,実は『フグリ』というのは睾丸のことなんですよ」
「つまりは『大きい犬のタマキン』という意味ですよ。いっひっひっひ」
O(♀ 美人)は,真っ赤な顔をして俯いた。
しかし,O(♀ 美人)は,きっと顔を上げてこう言った。
「社長,何でも知っててすごい!」
ここまでは学術的な会話である。
しかし,その後おもむろに自分の股間を指差して言った。
「私のフグリも大きいんですよ。いっひっひっひ」
普通,大きさを自慢するなら袋ではなく棒の方だ。
しかし,社長は棒を自慢できない。
何せ帽子を被った礼儀正しい象さんなのだから・・・
それから一時期,フグリの大きさを競い合うことが,オイラたちの間で流行りだした。
勿論,チャンピオンは社長だったのは言うまでもない。
それから1週間,社長の顔はいつにも増して輝いていた。
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