土曜日, 11月 18, 2006

たもちゃん 1

 『たもちゃん vol.1』

 たもちゃんはオイラの義父だ。
 たもちゃんは,もう年寄りだ。
 しかも,パーキンソン病だ。
 だから体が自由に動かせない。
 アルツハイマーも徐々になってきているようだ。
 時々,おかしなことを話し出す。

 この間のことだ。
 農繁期だったため,一時的に介護施設に入ることになった。
 オイラと嫁と娘とは面会に行った。
 するとたもちゃんの様子がちょっとおかしい。
 なぜか,お尻をモゾモゾとさせている。
 嫁は聞いた。
 「ちょっと,じいちゃん,何モゾモゾしてるの」
 「うん?なんでもない」
 「さっきからモゾモゾしてるしょ。今日はウ○コちゃんと出たの?」
 パーキンソンになると便秘になるのである。
 「ああ,さっき出た。」
 「ちゃんと拭けた?」
 「「うん」
 「本当? 本当はちゃんと拭いてないしょ?」
 そう,たもちゃんはウ○コの後,上手にお尻が拭けなかったのである。
 だから,黄門がかゆくてモゾモゾしていたのである。
 「「ちょっと四つん這いになって!」
 嫁の攻撃は容赦ない。
 嫁はたもちゃんにワンワンスタイルにさせようとする。
 必死に抵抗するたもちゃん。
 しかし,嫁のパワーは圧倒的であった。
 仕方なくワンワンスタイルをするたもちゃん。
 「ほら,ちゃんと拭けてないしょ!」
 そして,たもちゃんは情けないワンワンスタイルのままで,実の娘にお尻を拭いてもらっていた。
 お尻の穴まで実の娘に見られてしまった,たもちゃん。
 数年前までは,威勢よく活動的だったたもちゃんがこんな姿に・・・

 オイラはたもちゃんが放つウ○コの香りの中で人間の尊厳と斜陽を見ていた。
 なすがままのたもちゃん,彼の姿が将来の自分の姿に見えてきた。

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