『たもちゃん vol.1』
たもちゃんはオイラの義父だ。
たもちゃんは,もう年寄りだ。
しかも,パーキンソン病だ。
だから体が自由に動かせない。
アルツハイマーも徐々になってきているようだ。
時々,おかしなことを話し出す。
この間のことだ。
農繁期だったため,一時的に介護施設に入ることになった。
オイラと嫁と娘とは面会に行った。
するとたもちゃんの様子がちょっとおかしい。
なぜか,お尻をモゾモゾとさせている。
嫁は聞いた。
「ちょっと,じいちゃん,何モゾモゾしてるの」
「うん?なんでもない」
「さっきからモゾモゾしてるしょ。今日はウ○コちゃんと出たの?」
パーキンソンになると便秘になるのである。
「ああ,さっき出た。」
「ちゃんと拭けた?」
「「うん」
「本当? 本当はちゃんと拭いてないしょ?」
そう,たもちゃんはウ○コの後,上手にお尻が拭けなかったのである。
だから,黄門がかゆくてモゾモゾしていたのである。
「「ちょっと四つん這いになって!」
嫁の攻撃は容赦ない。
嫁はたもちゃんにワンワンスタイルにさせようとする。
必死に抵抗するたもちゃん。
しかし,嫁のパワーは圧倒的であった。
仕方なくワンワンスタイルをするたもちゃん。
「ほら,ちゃんと拭けてないしょ!」
そして,たもちゃんは情けないワンワンスタイルのままで,実の娘にお尻を拭いてもらっていた。
お尻の穴まで実の娘に見られてしまった,たもちゃん。
数年前までは,威勢よく活動的だったたもちゃんがこんな姿に・・・
オイラはたもちゃんが放つウ○コの香りの中で人間の尊厳と斜陽を見ていた。
なすがままのたもちゃん,彼の姿が将来の自分の姿に見えてきた。
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