『社長 vol.29』
この話も夏休み中の野外実習中の出来事である。
夕食前のことであった。
我々は風呂に入っていた。
大雪山にあるその研究所には風呂が一つしかなかった。
何せ,研究所とは言っても山小屋に毛の生えた程度のものだったので当たり前であろう。
我々男子が夕食前に入り,夕食後に女子が入るのが慣例であった。
そして,その時も我々男子は夕食前に,湯船に浸かったり,頭を洗ったり,体を洗っていた。
「い~ひっひっひっひ」
社長のいつもの甲高い笑い声が風呂場の中に響き渡った。
甲高い笑い声を風呂場中に響き渡せながら,社長は数箇所ある洗い場を行ったり来たりしている。
社長はあることを企てていたのである。
それは・・・
ありとあらゆる石鹸に,自分の陰毛をくっつけているのである。
そう,我々の後に入浴するのは女子である。女子たちに対する社長ならではのセクハラである。
我々は言葉を失った。
「夕食後に風呂に入るOさんやYさんの驚く顔が目に浮かびますよ。いっひっひっひっひ」
「私たちが女子の後に風呂に入るんだったら,浴槽の中のお毛毛を掬い取るんですけど。いっひっひっひっひ」
「それも出来ませんから,せめてこのくらいのことはしないと。いっひっひっひっひ」
さすがは社長である。
就寝前の女子のひそひそ話はきっと「陰毛付き石鹸」だったに違いない・・・
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