『オラの家族 Vol.6 チコとトコ 1』
チコはオスのインコである。
トコはメスのインコである。
彼らは,あてがわれた番(つが)いとして,夫婦生活をそれなりに営んでいた。
生まれた雛は7羽以上いたと思う。
ただ,お互いに好みや相性はどうだったのかは,知る由も無い。
勿論,幸せだったのかどうかも分からない。
しかし,彼らは,やることはやっていたのである。
チコは人懐っこく,人の肩や頭の上によく乗る鳥だった。
よく部屋の中を盛んに飛び回っていた。
口を鳴らして呼ぶと必ず寄って来た。
しかし,触られるのはとても嫌いだった。
トコは反対に人嫌いで,人に殆ど乗る事は無い鳥だった。
部屋の中のお気に入りの所だけにいた。飛び回ることはあまり無かった。
口を鳴らしていくら呼んでも絶対に近寄って来なかった
しかし,掴まれたり,触られたりしても,なすがままだった。
まったく正反対の性格の夫婦である。
どう考えても同じ種類の生物とは言い難い。
そんな彼らであるが,食事の嗜好は一致していた。
粟と殻付きの何かを餌にしていたが,彼らは殻付きの餌を好んでいた。
粟は,他の餌が無くなった時の非常食だったようである。
そんな愛らしい彼らであったが,トコの最後は天寿を全うしたものではなかった。
卵を産む時期になると,早めに巣箱を籠の中に入れるのが,オイラの役目だった。
それまでは,きちんと入れていた。
しかし,その時は何だか面倒くさくて,巣箱を入れるのを引き伸ばしにしていた。
ある朝,トコの様子が変だった。
お尻から卵の形の肉塊を出していたのである。
オイラは何が起こったか,咄嗟に飲み込めた。
トコは卵を産みたくて仕様が無かったのだが,巣箱が無いため,我慢をしていたのだ。
我慢が限界を超えて,子宮(でいいのかな?)が,お尻から出てしまったのだ。
オイラは,慌てて巣箱を入れた。
しかし,時既に遅し。
彼女はもう卵を産む時期を逸していた。
そう,オイラが怠けたからだ。
それを見かねたオイラの親父が,手荒な手術を施した。
断ち切りばさみで子宮を切ったのだ。
どれだけの痛みがトコを襲ったのだろう。
どんなに苦しいかったろうか。
次は,ちゃんと巣箱を入れてあげようと,オイラは強く心に決めた。
しかし,次はもう無かった。
トコは,翌日冷たく籠の中に横たわっていた。
オイラは,トコを両手で包み,そっと土に埋めた。
今も,土の中でトコはオイラを恨んでるだろう。
でも,できれば,虹の橋の袂でオイラを待っていて欲しいと思う。
そして,トコを肩に乗せて,虹の橋を渡りたい。
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