『社長 vol.16』
1985年4月,そんな社長も大学を卒業し,とある中学校へ赴任して行った。
そう,彼は教師になったのである。
こんな彼を採用したのは,北海道教育委員会である。
おろかなお役所仕事である。
面接で,彼の本質の一端でも見出すことはできなかったのであろうか?
やはり,講釈垂れるのがうまい社長の方が一枚上手だったのだろう。
面接官を責めるのは忍びない。
彼は晴れてR町へ赴任して行った。
R町は漁師町である。
社長のずぼらな性格は,きっぷのいい男と勘違いされ,漁師の父ちゃんたちのハートをがっちりと掴んだらしく,PTAの飲み会では,甚くもてたらしい。
「こっちの町では,PTAの飲み会でお金を払わないんですよ。いっひっひっひ。馬○な父ちゃんたちがみんな払ってくれるんですよ。いっひっひっひっひ。」
電話の彼の口調はいつにも増して明るかった。
それはそうである。
彼は,「ただ」が大好きなのである。
借金も「ただ」で貰ったお金と思い込んでいる男である。
しかし,その何倍もの負債を背負い込むことになる破目になるとは,社長とて,思いつきだにしなかったのである。
先ほども言ったようにR町は漁師町である。
漁師はみんな,普通の船の他に「特攻船」を持っている。
「特攻船」とは・・・違法に他国の領海内に入り,ささっと密漁をしては,疾風の如く逃げ出せる突拍子もないスピードを持った船のことである。
そんな父親を持った子供たちを相手に教師を行う社長は哀れだ・・・
そう,彼も他国のようにやられたのである。
陸の上の「特攻船」に・・・
ある日,彼は部活の関係で生徒たちを車に乗せた。
そして,エンジンを掛けたまま書類を取りに学校内に戻った。
その時,DQNな親を持つDQNな生徒が車を動かし,そのまま学校に特攻してしまった。
社長のHONDAシビックは大破した。
社長は一瞬にして600000円を失った。
数回の飲み会代が600000円掛かったのも同様になってしまった。
数日後,社長は新たに借金をしてまた,中古のHONDAシビックを買った。
PTAの飲み会はその後も「ただ」だったらしい・・・
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