『社長 vol.37』
『下手の横好き』という言葉があるが,社長の場合は『下手の飛ばしすぎ』だった。
社長のドライブテクニックは最低だった。
しかし,社長は飛ばして運転していた。
まあ,これもススキノでお買い物をするために得た技能なのだろう。
まさに『好きこそものの上手なれ』である。
ちょっと違うか。
そんな社長であるが,免許を取り立ての頃は,トロトロ運転だった。
大学3年目の秋のことである。
社長が免許を取得したので,みんなでお祝いにドライブに出掛けた。
勿論,ドライバーは社長である。
命を賭けたお祝いなのである。
Kは,この日のために秘策を練っていた。
Kは,どこからか『運転技術は卵を車の中に吊るせば分かる』ということを仕入れてきていたのである。
Kは,この命懸けのドライブのため,卵をポケットに忍ばせた。
そして,半ば強引に助手席に乗り込んだ。
そう,ドライブの最中に卵をフロントガラスの上に吊るしたのである。
最初の20分は,快適なドライブであった。
そして事が起きたのは,E峠に差し掛かった時だった。
E峠は,細く狭い曲がりくねった道路で有名だった。
以前に2回死亡事故があった事故の名所でもある。
行き先を選んだのは,言うまでも無く社長である。
我々は,腋の下に嫌な汗を感じた。
急カーブに差し掛かった時である。
吊るしていた卵が大きく揺れて,フロントガラスに激しくぶつかった。
卵が割れた。
フロントガラスと運転席は,卵にまみれた。
しかし,ここは峠。
しかも狭い道である。
当然,車を止めることは事故に繋がる。
このまま運転することも事故に繋がりかねない。
その究極の選択の時,社長の発した言葉がこうだった。
「卵の白身がズボンについて,まるでザーメンのようですよ。いっひっひっひ」
命よりも性的な事を優先させる,まさに社長らしい社長であった。
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