土曜日, 11月 18, 2006

オラの家族 7

 『オラの家族 Vol.7 ココ』

 ココは,不憫な仔だった。
 ココは,チコとトコの仔である。
 ココは,双子の片割れだった。
 ココはアルビノであった。
 柔らかい羽毛は真っ白だった。
 やはり,自然は弱いものに厳しい。
 ココは,親から見捨てられた仔だった。

 親に餌を満足に与えてもらえなかった。
 いつも弱々しくピーピー鳴いていた。
 籠の隅で。
 オイラは,ココを親から離した。
 このままだとココが死んでしまう。
 そんな思いからだった。
 しかし,それはオイラの過ちだったのかもしれない。

 オイラはココを籠から出し,菓子の空き箱で育てることにした。
 食事が満足に与えられ,少しずつ体が大きくなっていった。
 しかし,いつまで経っても羽毛は真っ白のままだった。
 オイラは,毎日ココを手の中で抱いて,撫でていた。
 ココは嬉しそうに目を細めていた。
 手の中のココは,ふわふわで温かかった。
 
 ある時,ココは飛んだ。
 大きくなったココは,飛べるようになっていたのだ。
 そして,その朝,ココは飛んでしまった。
 台所にあった,ぐらぐらと煮え立つお湯の中へと。
 慌てて,お袋はお湯からココを救い出した。
 しかし,ココは無事ではなかった。

 ココは下半身を大きく火傷してしまった。
 ずっと蹲ったままだった。
 排泄が苦しそうだった。
 満足に排泄物が出せなかった。
 オイラは,暇があるとお尻を濡らしたちり紙で,拭いてあげた。
 オロナインも塗ってみた。
 毎日毎日ココを抱いていた。
 ココは小さく震えていた。

 そして,苦しみの中,ココは死んでしまった。
 火傷の苦しみの中で。
 ココは親に苦しめられ,火傷に苦しめられ。
 ココは苦しむために生まれてきたのだろうか。
 オイラがもっと気を付けていれば,飛べそうに育ったのだから籠に入れれば,ココは楽しい一生を終えられたかもしれない。
 オイラには,後悔とココの柔らかい羽毛の感触だけが残っている。

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