『たもちゃん vol.7』
今のたもちゃんの楽しみは,食べることだけだ。
特に甘い物には目が無い。
袋菓子があると,いつの間にか無くなっている。
すべて,たもちゃんの所為だ。
そう,たもちゃんは他の人がいないと食べ物を探して徘徊するのだ。
人がいる時には,椅子から動かないが。
この間,久し振りにたもちゃんのところへ行った。
お土産に,ゼリーの詰め合わせを持って行った。
嬉しそうな顔をするたもちゃん。
たもちゃんは,早速ゼリーを口にした。
しかし・・・
動きが鈍い。
とてつもなく鈍い。
3歳児よりも食べるのが遅い。
それはそうなのだ。
パーキンソン病は,手足が不自由になるのだ。
プルプルとしたゼリーをプルプルとした手で食べるたもちゃん。
一口を口に運ぶまで,30秒は掛かる。
飲み込むのは速い。
遂に,たもちゃんは痺れを切らした。
「おい。カレン(嫁の名)。食わしてくれ」
嫁は,冷たく突き放す。
「そんな物くらい,自分で食べなよ。あたしは忙しいんだから」
淋しい目でオイラを見つめるたもちゃん。
オイラは・・・
目を逸らしてしまった。
こんなオイラは婿失格だ・・・
たもちゃんは,優しさを計るリトマス紙のようになってしまった。
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