『社長 vol.15』
そうそう,この事件も社長を語る上で書き留めておかなければならない。
ウニをたらふく食って,社長のおかげでウニの実験は中止になった臨海実習でのことだ。
我々2年目は,夕食前に風呂に入っていた。
当然,Y教授も一緒である。
暗い暗いと言われていたKも一緒に風呂に入った。
性格の暗さにも拘らず,Kのイチモツは,それはそれは堂々たるものだった。
黒光りを帯びて,直径6cm,長さは18cmくらいだったろうか?
それをいいことに,Kは湯船の中でイチモツを手にして,イチモツの先端を水面から出し,
「ネッシー,ネッシー」
と喜んでいた。
岡田監督似のHもイチモツに自信があったため,すぐに加わった。
我々もイチモツには自信がないが,「勝つことではなく,参加することに意義がある」というクーベルタンの言葉の如く参加することに意義を持ち出した。
6,7人もの男共がイチモツを持ち上げて,
「ネッシー。ネッシー」
と大声を上げながら湯船を走っているのだから,傍から見れば異様な光景に違いない。
Y教授は呆れて言った。
「お,お,お,お前らは,ほ,ほ,ほ,本当にホモ・サピエンスだな」
「しゃ,しゃ,しゃ,社長君はな,な,な,仲間に入らないのかい?」
認識が間違っている。
教授は社長のイチモツを知らないのである。
社長は加わらないのではなく,加われないのである。
イチモツに対し,少しばかりの劣等感を持っていただけなのである。
みんなが,
「ネッシー。ネッシー」
と喜んでいる間に,社長は一人,寂しげに風呂を後にした。
その背中はとてもとても小さかった。
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