土曜日, 11月 18, 2006

社長 18

 『社長 vol.18』

 教師になった社長は輪をかけて酒癖が悪くなった。
 DQNな親を相手に飲むのだから,社長一人の責任ではないだろうが。
 
 それは10月の頃であった。
 学校で観楓会が行われたときだった。
 その日も社長は積極的に『カポ』をやったらしい。
 他の先生からのアンコールに応えて,際限なく『カポ』を行ったらしい。

 その結果,予想通り社長は泥酔したらしい。
 社長は泥酔した体で無理やり車に乗り込んだらしい。
 そう,彼は飲酒運転をしたらしい。
 社長もとうとう刑事的問題を起こすようになった。

 ただでさえ,社長は運転が上手くない。
 よくこれで免許を取ることができたと周りの誰もが思うくらい,運転が下手糞だった。
 そんな腕前の持ち主が泥酔状態で運転したら・・・

 そう,あなたの予想は当たっている。
 彼の車は予想通り路肩からはみ出し,溝に落ちたらしい。
 その溝がすごかったらしい。
 路面からの落差が約2mあったらしい。
 溝と言うより崖に近いらしい。
 それにも拘らず,悲惨な事故にはならなかったらしい。
 車もそれほど破損せず,社長の体も無事だったらしい。

 普通,2mもの落差のある場所から落ちたのなら,意識は覚醒するはずである。
 アドレナリンの分泌も多大に行われるはずである。
 やはり,社長は社長であった。
 車が落ちても寝たままだったらしい。
 朝になり,社長の車が落下していたのを発見した同僚に揺り起こされるまで,社長は寝ていたらしい。
 
 社長は持ち前の強運を発揮し,飲酒運転でK察に検挙されることもなく,怪我をすることもなく,車を破損させることもなく乗り切ったのである。
 我々の間では,彼の地位は神の領域まで達した。

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