『オラの家族 Vol.2 リリーの1日編(1)』
オラは昔から犬が好きだった。
しかし,金を出して犬を飼ったのは,リリーが初めてだ。
オラにとって,リリーは超高級犬である。
今までは,野良犬を拾ってきたり,知り合いから貰ったりしてたのだから。
しかし,リリーは,今まで飼った犬の中で一番のはずれだ。
その事については,前回書いたのでもう止めにする。
さて,今回は彼女の1日の行動を記そう。
6:00 暇なんだから早く起きてよ
彼女の1日は,まず,オラと嫁の間から起床する事から始まる。
熱帯夜以外は,まず,このパターンである。
夜明けの肌寒さの中,人の温もりを求めて,オラと嫁の間に入ってくるのだ。
そして,起きて一つ伸びをすると,真っ先に嫁の顔を鼻先で突っつく。
早く散歩に連れて行けという彼女の欲望の催促である。
時々,5:00前に起きて,嫁に怒られるときもある。
6:30 お散歩大好き
約2kmの距離の堤防を散歩する。
堤防に行く途中,3匹の犬に対して吼える。
これは日課である。
彼女の彼女なりのセレモニーなのである。
何せ,彼女は吼える犬なのだ。
犬を見て,黙っていることはできない。
でも何故か,猫を見てもあまり吼えない。
いつもの3匹に対しては,彼女なりに自分が優位に感じられるのだろう。
強気の姿勢で吼えまくる。
そして,嫁(たまにオラ)に必ず叱られる。
それでも,彼女は決して吼えるのを止めようとはしない。
お馬鹿さんなのである。
堤防に着くと,ハーネスから紐を外し,自由に歩かせる。
彼女は,紐を解き放たれても,喜び勇んで走り回ることはあまり無い。
嫁やオラの傍から20m以上は離れない。
不安なのである。
彼女が先に歩いている時は,15mも離れると立ち止まって追いつくのを待っている。
所々で,何か彼女にとって気になるものがあるのか,熱心に臭いを嗅ぐ。
必然的に嫁やオラに置いて行かれる。
すると彼女は,猛スピードの必死の形相で追いかけてくる。
兎に角,独りになるのが不安なのである。
そして,時々,他の散歩の犬とすれ違う。
よく会う犬に,じいちゃんが連れた柴犬がいる。
おじさんが連れたラブラドールにも,時々会う。
勿論,彼女は吼えまくるのは言うまでもない。
しかし,彼女の前脚は震えている。
いつも震えている。
ビビッているのである。
負け犬の遠吠えである。
震えるくらい怖いのなら吼えなきゃいいのにと思う。
しかし,彼女の中の何かが彼女を駆り立てるのだろう。
必ず吼える。
もうこのパターンは止めて頂きたい。
そして,無事かどうかは分からんが,散歩が終わって帰宅する。
『オラの家族 Vol.2 リリーの1日編(2)』
7:00 ハムが食べたいわ
彼女の食事は主にシーザーだ。
1缶128円也(一番安い店で)である。
シーザーよりランク下のドッグフードは一切食べない。
1回,賞味期限の切れた安売りのフードを食べさそうとしたが,駄目だった。
でも,彼女はシーザーに満足してわけではない。
彼女の楽しみは,フードを全部食べ終わった時に貰えるハムなのである。
彼女はフードよりも人間の食べ物に対して異常な程の執着心を持っている。
もしかしたら犬のグルメなのかもしれない。
前世が人間だったのかもしれない。
もう,好き嫌いがはっきりしている。
しかし,フードを全部食べなければ,ハムは貰えない。
原則的に。
ハムは,食事をしっかり摂ったご褒美なのである。
しかし,時々原則を外れる事がある。
どうも生理中になると,彼女の食欲は減退するらしい。
フードを全く食べようとしない。
そんな時は,彼女に対して甘すぎる嫁は,ハムをフードにトッピングする。
そして,ようやく彼女の食事は終わる。
7:30 あたし果物大好きよ
オラは,朝食を摂らない事が多い。
大体は朝食代わりに,季節の果物を食する。
彼女は,オラが果物を食べようとすると,必ずオラの前でお座りをする。
勿論,横座りだ。
そして,切ない目をしてオラを見上げる。
嫁は,必ず彼女用の小さく切った果物をオラの皿に載せている。
彼女は,本能的・経験的にそれを知っている。
彼女用の果物を貰えるまで,オラから離れることは絶対に無い。
オラから果物を貰い終わって,「終わり」と宣言されるまでオラの前に座っている。
「終わり」と宣言されても離れない事の方が,多いかもしれない。
7:45 行っちゃイヤン
ジャラッとした,車のキーの音でオラの出勤が分かる。
オラが出勤しようとすると彼女は激しく吠え立てる。
「行くな」と言っているのである。
彼女は,家から誰かが去っていくのをとても嫌がる。
どんな客に対しても,家から去ろうとする者には「行くな」と吼えまくる。
そして,時々,オラのズボンの裾を噛り付き,行かれない様にするときもある。
この間もズボンの裾を破かれてしまった。
しかし,オラは無情にもそのまま出勤するので,彼女は諦めるしかない。
8:10 ねえちゃんも行ってしまうの?
オラの時と同様,激しく吠え立てる。
しかし,娘にも無情に置いて行かれる。
8:30 布団でじゃれじゃれ
嫁が布団をしまう。
布団を畳む行為が,彼女にとって面白いらしい。
次々と畳まれていく布団にダイビングアタックを仕掛ける。
嫁も布団を畳みながら,彼女に構ってやる。
彼女のお気に入りは,オラの布団下に敷かれている乾燥剤入りの敷物である。
オラは寝汗がひどい為,毎日これを敷いて寝ている。
これが彼女にとって,堪らないらしい。
乾燥剤入りの敷物の周りを激しく吠え立てながら齧ろうとする。
しかし,齧られてしまっては,使用不可となってしまうので,嫁は必死に防戦する。
これが嫁と彼女とのお遊びだ。
今のところ嫁は防衛し続けている。
9:30 お楽しみのおやつまだかしら?
嫁が家事をこなしている間でも,この時間になると彼女は冷蔵庫の前でお座りをする。
おやつの時間だからである。
おやつの内容物は色々だ。
彼女はこれを食べ終わらない限り,冷蔵庫の前から離れない。
そして,食べ終わると,ものすごく悲しげな目をする。
『オラの家族 Vol.2 リリーの1日編(3)』
10:00 暇だから,お昼寝でもするか・・・
食べるものは食べてしまったので,ある程度彼女は満足する。
そして,玄関と居間の境界上でのんびりと昼寝をする。
しかし,この時に外から何かの物音が聞こえると,黙っちゃいない。
吼えまくる。
そして,彼女なりに満足すると又昼寝をする。
11:00 獲物発見,ターゲットロックオン!
彼女は,嫁が掃除をするのを妨害する。
彼女は電気掃除機には,興味が無い。
彼女の関心は,専らダスキンの科学雑巾である。
これを使って嫁が掃除をすると,獲物を狙うように瞳が光り,盛んに攻撃する。
尻尾は全開に回転している。
そして,しきりにくしゃみをする。
12:00 おいちいな
彼女は基本的に昼食が当たらないことになっている。
しかし,彼女に甘い嫁は,自分の昼ごはんを彼女に与える。
彼女にとってこれは昼食と言うよりおやつに近い感覚であろう。
とりあえず人間の食べ物を貰うと満足する。
彼女の血圧は高塩分の為,高血圧であると推測される。
しかし,血圧は測ったことが無いので分からない。
12:30 お昼寝ごろごろ
この時間,彼女は暇である。
この時間になると嫁もあまり相手をしてくれない。
娘も帰ってこない。
暇をもてあまして,彼女は寝るしかない。
時々,隣の児童公園から子供の声が聞こえると,激しく吠え立てる。
それがこの時間帯の唯一の楽しみである。
それを除けば,平穏なひと時である。
15:00 やっと帰ってきたわ
兎に角,彼女は誰かが来ると嬉しくて堪らない。
娘が帰ってくるのを足音で察知する。
そして,玄関で待っている。
娘は,彼女を抱きしめ撫でてやる。
彼女は尻尾を振り,目を輝かせて喜ぶ。
しかし,彼女の喜ぶ様子は1分で終わりを告げる。
5・6回も撫でられると,もうどうでもよくなる。
17:00 嬉ちい嬉ちい
彼女はオラの車のエンジン音が分かる。
オラが帰宅すると必ず,玄関で待っている。
その一瞬だけは,忠犬ハチ公になっている。
勿論,彼女の忠実は一瞬で終わる。
オラに対しても,5・6回撫でられると,もうお終いである。
しかし,時々ではあるが3分位,オラから離れない時がある。
その時は必ず,オラの腋を嗅いでいる。
彼女は,オラの脇の臭いが結構お気に入りらしい。
そんな時は,必ずくしゃみをしている。
腋臭の臭いでくしゃみをするわけではない。
彼女は嬉しい時,必ずくしゃみをする。
嬉しい時にくしゃみをするのは分かったが,何故かは分からない。
そして,これで彼女は,家族が全員揃ったと安心する。
『オラの家族 Vol.2 リリーの1日編(4)』
17:15 あたし臭い足が大好きよ
オラは,靴下があまり好きではない。
靴下を履くと足が蒸れて嫌なのである。
オラは汗かきである。
だから,オラの足は臭い。
しかも水虫である。
しかし,彼女にとってオラの足は,もう猫のマタタビの如し。
オラがソファーで寛いでいると,ずっとオラの足を舐め続けている。
もしかすると彼女の口の中は,水虫に冒されているかもしれない。
嫁は,ずっとそれを心配している。
17:30 おこぼれを待つワン
嫁が夕食を準備する時,大体に於いて彼女は嫁のそばを離れない。
おこぼれを頂戴する為だ。
更に,ある事を嫁がしようとすると何処にいても飛んで来る時がある。
それは,野菜をキッチンの床下の室から取り出す時である。
別に何か食べ物を貰えるわけではない。
特別なことがあるわけではない。
それなのに,彼女はやたらと興奮する。
興奮して,室の口の周りを激しく回る。
勿論,吼えながら,尻尾を振りながらである。
さらにくしゃみも凄い。
何故こんなにも興奮するのか,未だに以って不明である。
18:00 何か貰えないかな?
朝食と同じ。
ハムを貰える事だけを考えて,彼女の夕食は終わる。
そして,食事中の嫁・娘・オラの所を行ったり来たりして,おこぼれ頂戴を期待する。
19:00 傍に寄っちゃ嫌!
おこぼれ頂戴が終わると,またしても暇をもてあます。
寝室や娘の部屋で一人になって寛ぐ。
そこへ時々オラや嫁や娘が傍に寄っていく。
すると,彼女は嫌な顔をして,すぐに逃げ出す。
本当に嫌そうな顔をする。
でも,ほんの時折,逃げ出さずに腹を撫でさせるときがある。
そんなときの彼女の姿勢は,おっぴろげのおちょん丸出しである。
妙齢の女性として,恥ずかしいと思わないのだろうか。
不思議である。
20:00 やきもち焼いちゃう
娘が風呂上りに嫁に耳掻きをして貰ったりすると,娘にやきもちを焼く。
自分も構って貰いたくて,周りをうろうろする。
そして,時々,構ってくれないのにイラついて,娘の足を噛んだりする。
べたべたされたくないくせに,やきもち焼きなのである。
オラと嫁が,いちゃついた様子を見るだけでも,彼女は怒る。
オラと嫁は時々,それを見て喜んでいる。
『オラの家族 Vol.2 リリーの1日編(5)』
21:30 肥満の原因
嫁の唯一の楽しみ,読書をしながらのビールタイムである。
これが,彼女にとってもお楽しみの夜食タイムでもある。
彼女の肥満の原因でもある。
嫁のビールのつまみのさきいかやピーナッツを貰うのである。
ポリポリ言わせながらピーナッツを齧る。
さきいかも齧る。
すぐに飲み込むからさきいかの本当の美味しさなんて分からないとオラは思うのだが。
犬は牙しかないから,豆類などは食べにくいだろうに,それでも食べている。
流石,本能の塊である。
そして,おこぼれをいくつか貰うと,嫁に「もうお終い」を宣言される。
仕方なく,彼女はしぶしぶ何処かへ去って行く。
22:00 仕方がないから,おねんね
夏なら涼しい所,冬なら暖かい所を求めて,そこで眠りにつく。
これで彼女の長い1日は終わる。
彼女にとって日常に於けるお楽しみは,食事と散歩とじゃれだけである。
しかし,時々,彼女にとって特別な事がある。
それは,オラの親父の登場である。
オラの家に親父が来た時とオラが親父の家に行った時である。
兎に角,彼女は親父が大好きである。
食べ物を貰うとき以外は,必ず,絶対親父の傍にいる。
親父をこんなにも好きな理由として考えられるのは,散歩である。
親父は何処にいようと,必ず彼女を連れて散歩に行く。
延々と1時間以上も散歩する。
まず,それが大きな理由だと思う。
しかし,それだけでは納得出来ない面がある。
散歩が終わった後でも,親父の傍から離れないのである。
親父の顔をずっと見続けて,隙あらば親父の顔を舐めようとする。
どれだけ,親父が邪険に扱っても離れない。
よく分からん。
彼女と親父の間に何か相通じるものがあるのだろうか。
彼女は何も言わないから何も分からない。
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